イツカノミライ ページ24
温かい日差しが地面を照る。
俺は手桶片手にAの元へやってきた。
綺麗に周りを掃除して、Aの今日のラッキーアイテムであるイルカのキーホルダーを横に置く。
__もう、15年か。
__この15年間色々あったのだよ。
__変わらずあいつらとはバスケをする仲だ。
__もういい年なのだがな。
__最近、またあの手紙を読んだのだよ。
__〔新しい人見つけて、それで、それでね?〕
__〔幸せになって!〕
__ 〔真太郎に新たなる幸せが訪れますように。〕
__そんな日が、果たしてくるのだろうか。
__ずっと考えていたのだよ。
「真太郎。」
__A。お前の事を忘れたわけじゃない。
「私にも挨拶させて。」
「初めまして、かな?Aさん。」
「俺、結婚することになったのだよ。」
「真太郎の大切な人に挨拶できて良かった。」
「あぁ。俺も紹介できて良かったのだよ。」
「幸せに、なろーね!」
「当たり前なのだよ。早く車に乗るのだよ。」
「はーい!
真太郎、もう少し話してくれば?」
「…いや、良いのだよ。
想いは全て伝えた。」
__A。俺にも大切な人ができたのだよ。
お前が決して大切じゃなかったのではない!
ただ、Aと同じくらい大切に思える人ができた。
大切の種類は違うがバスケの仲間もだ。
__これが吹っ切れていると言うのかは俺にはわからない。
だが、2人が大切であることに間違いはないし、
大好きだ。
__また、会いにくるのだよ。
「またな、A。」
車に乗り込みシートベルトをする。
Aの元から離れていく。
一本道が
これから先の未来に向かっている感覚に感じた。
その通りかも、しれないな。
俺はこれから先、どんなミライを描くのだろうか。
そんな気持ちに心を弾ませながら道を進んでいった。
.
手を繋ぎながら車の元へ歩いて行った男女。
そして、エンジン音を響かせながら消えた車。
もう、車の影は見えない。
車の音ももちろんなく、ただ風に吹かれて木が揺れている。
イルカのキーホルダーに桜の花弁が一枚。
私はクスリと笑う。
彼らしいや。まだラッキーアイテムなんて持っちゃって。
「お幸せに、真太郎。」
もう見えない車に向かって私はそう呟いた。
.
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作者名:オーロラ | 作成日時:2019年8月9日 1時