No.141 ページ41
「目黒くん！」
教室で待っていた目黒くんに慌てて駆け寄る。
掃除が長引いたために、すでに日は暮れかかっていた。
「お疲れさま」
「ごめんね、ずいぶん待ったでしょ？」
「いや、そこまで長くなかったよ」
「そっか」と呟く。
……いつ、言おうか。
沈黙した私に、目黒くんは私の鞄を差し出す。
「……とりあえず帰る？」
「あ、――うん」
鞄を受け取る。
だけど、目黒くんの手は差し出されたままで。
ん？と目黒くんを不思議そうに窺う。
「……鈍い」
ぼそっと目黒くんは罵ってから私の手を強引にさらった。
それでようやくはっと気づいて、私は顔をほてらせる。
「な、なんか、照れくさいね、こういうの」
「……そうだね」
目黒くんの顔は背けられているけれど、
耳がうっすら赤くなっていた。
「……もしかして照れてる？」
「……そんなわけないでしょ」
む、と目黒くんは私を睨んでくるけれど
その顔はまだ少し赤くて、
私は何も言わずに笑った。
そこで、思い出したように目黒くんは立ち止まる。
「どうかしたの？」
「あのさ……
教室のことだけど、
……もしかして
何か話したいことが
あったんじゃないの？」
そんなふうに、見えた。
目黒くんはそう言って私の様子を窺う。
「……相変わらず鋭いなー」
私は歩きながら、答える。
「……川波さんがね、このまえクラスに来て。
……自分を責めていいってそう言ったから、気になって康二くんに確かめてみたの。
――川波さんと康二くんがしたこと」
……目黒くんが、私に隠したこと。
小さくそう呟いて、
でも不安になって繋いでいる手に力を込める。
「……ああ、そのことか」
ふ、と息を漏らして、
目黒くんは困り顔を浮かべる。
「じゃあ……
木ノ下さんは全部、
もう知ってるんだね」
こくりと頷く。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
