No.140 ページ40
私は強張らせていた頬を緩めて笑みを溢した。
「……嫌いになんて、ならないよ」
そう告げる。
「……少なくとも、軽蔑なんて絶対しない。
だって、川波さんも康二くんも、
きっと私よりもっと傷付いてたでしょ？
確かに私は悲しかったし、
苦しんだときもあったけど、
……こう言うと、どうかと思うけど……
今、ちゃんと目黒くんとうまくいってるから」
結果オーライだよ、と明るく言ってみる。
「……だから、さ。
康二くんも川波さんも、
もう気にしなくていいんだよ」
康二くんはようやく浮かない表情を崩してぎこちなく笑みを浮かべた。
「……それ、なんかずるいな」
そう言って、困ったように眉を下げた。
「……隙あらば、奪ってやろうなんて考えてたけど。
……そんなふうに言われると何もできひん」
降参と言って、手を挙げた康二くんに私は押し黙る。
「……康二くん、目黒くんもたぶん……」
「分かっとる。
全く、目黒はお人好しっていうか、
簡単に許しすぎっていうかさ……」
「……同じ部活なんだっけ？」
「おん。
ま、ほんとにさ、いい彼氏作ったな」
「……私も、そう思う」
のろけかよ、とどつかれたので誤魔化すように笑った。
「……川波には、俺から伝えとくよ」
「え……や、私が直接」
「いいよ。
あいつが気にしてるの、俺たちのこと以外にもう一個別件やから。
ほんと、手間のかかる……」
溜め息と同時に、康二くんは挑発的に笑った。
「恋のキューピッドになってくるよ」
え、と思わず口を開けた私に
康二くんはまた吹き出して、
「じゃあね」と手を振った。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
