2喜 メデューサ ページ2
車が止まる
父は手続きで忙しいから
まずは私とアヤノと母が案内された
「突然連絡しちゃってごめんなさいね」
「もううちじゃ手に負えなくって…」
「こうやって会うのも大学ぶりだねぇ」
「私に何か手伝えることがあればいいけど…」
メガネをかけて、前髪をサイドに分けてる
どうやら見たところここの孤児院の先生らしい
母の反応から見て、きっと今から会う子達は
不良で間違い無いだろう
楽しみだ
ところでどうしてか
さっきからアヤノは
周りをきょろきょろ見回している
「電話でも話したけど、例の子供なんというか…」
「やっぱりおかしいのよ」
「超能力って言うのかしら」
「あなた昔からそういうの詳しかったじゃない？」
「興味がないわけじゃないけど」
「民俗学とオカルトじゃ畑が違うよ」
私は長い通路をそのアヤノを
じーっと見つめて暇を潰している
大人の言っている事は難しい
「ほら、昔あなたが熱心に研究してた」
「『日本のメデューサ伝承』…だったかしら」
「あれ、いまだに学会じゃ」
「ちっとも認められてないけどね」
「自分でもニッチな事やってる自覚あるし」
「あの話に出てきた『赤い目のメデューサ』」
「っていたでしょう、それであの子達を見てて」
「なんだかその話を思い出したのよねぇ」
「なるほど…ね」
ぼーっと二人の会話を耳に流していたら
さっきまでそわそわしていたアヤノの意識が
メデューサの話題に引っ張られる
吸い付くように母の袖を引っ張る
「お母さん、『メデューサ』ってだれ？」
「あれアヤノには話したことなかったっけ」
私もアヤノと母に目線誘導され
思わず声を上げた
「あ！それ私知ってるよ！！」
「髪の毛がこう、グワァーって、蛇になってて」
「目を見たら石になっちゃうの！」
「多分キレーな女の人だよ！！」
「へぇ…」
「私には教えてくれなかったんだ」ぷくぅ…
アヤノは私だけメデューサの正体について
知っていることに不服そうに頬を膨らませて
“Aにだけ教えたんだ”
アピールをガンガン飛ばしながら母をにらんだ
「え！？い、いやいや違うよ！！教えてない！」
「いつのまにそんなの覚えたのー？」
あ、
ホントだ、いつ覚えたんだろう
「きっと前世の記憶だと思う！」
私がにんまり微笑むと、母は
「凄いねぇ、じゃあAは特別だぁ！」と
わしゃわしゃと髪の毛を撫でてくれた
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作者名：肩書きの創作者 | 作成日時：2021年3月24日 7時
