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「待って、」
「嫌だね。」
べっ、と舌を出して言う彼の紫苑色の瞳は真っ直ぐ私を捉えていて、近くに投げ捨てた新聞紙がパサ、と音を立てて床に落ちる。
黒と白を基調に作られた手袋を外しながらリネさんは言葉を続けた。
「お父様は、Aの居場所を知りたがってただけで、強制的に連れ帰るつもりは無いみたいなんだ。」
私の両手を頭上で束ね、もう片方の手でリボンであしらわれたスカーフを首元から外す彼に、心臓がバクバクと音を立てる。
「だから僕は貴女の居場所を報告すれば任務は完了なんだけど、...後の事は僕に任せるって指示だったんだよねー。」
シュル、と解かれたスカーフで両手を縛られ、「リボンが似合うね。」なんて言うものだから、思わず顔を逸らしてしまう。
「っ、あんな記事を書いて、失踪事件が起こってること、知らないとは言わせないから!」
やっと言えた言葉に、彼は「ああ、」とどこか上の空で返事をして、「あれは面倒だったなー、ヌヴィレットさんの手も煩わせちゃったし。」と言葉を漏らす。
「結果から言うなら被害状況はゼロ。」
失踪事件と思われていたソレは、リネさん達が未然に防いでいたという。
私と同じ名前の方達を匿い、それは
とは言っても、罪に問われるんじゃないかと追及したが、何と一日三食豪華な部屋付きという言葉に、自ら着いてきたと言う。
それらは彼女達も証言していたそうで、罪には問われなかったらしい。
「上手く逃げる口実を作ってただけじゃ...、」
そう言おうとしたが、「シーっ。」と人差し指を当てられ悪戯に微笑む彼に、やっぱり。と確信してしまう。
こうしている今も、ティナリさん達は情報集めに勤しんでいるかもしれないのに...。
彼等に早く伝えなくては。そう思いながら身体を起こそうとした私を、何処から出したのか数枚のトランプを目前で翳し、横から顔を覗かせる彼。
「妬けたなあ、貴女が知らない男達と楽しくお茶会してた時は。」
パラパラ、と不規則に落ちてくるトランプは、私の身体のあちこちに降り注ぐ。
「ねえ、今___.....、」
首元に落ちた一枚のトランプを掬い上げ、リップ音を立ててキスした彼の唇はどこか艶を帯びていて。
「____.....誰の事考えてる?」
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怜 - ウァァ……(死)好きすぎる……びっくらぶ……結婚して……(?) (4月25日 0時) (レス) @page9 id: aa1dedb486 (このIDを非表示/違反報告)
いちごみるく(プロフ) - あくのさん» 生きてください!!!!😭😭💖💖文才力ないなりに頭捻り出して頑張ってます🥰応援とても励みになります!ありがとうございます😭😭💖 (3月22日 0時) (レス) id: 9c0c3ed197 (このIDを非表示/違反報告)
いちごみるく(プロフ) - るみさん» ありがとうございます😭😭💖筆が乗ってくれる日とそうじゃない日の差が激しくて😿本当はもっと書き綴りたいんですが💧 (3月22日 0時) (レス) @page9 id: 9c0c3ed197 (このIDを非表示/違反報告)
あくの(プロフ) - アッ………(心肺停止)作者様の書き方ほんとに好きです!!!これからも全力で応援します!!! (3月20日 23時) (レス) @page8 id: 514da34b34 (このIDを非表示/違反報告)
るみ(プロフ) - めっちゃ好き…、毎日見てます!!続き楽しみです! (3月20日 23時) (レス) id: 270f4769cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちごみるく | 作成日時:2024年3月17日 18時