3.ポーカー ページ5
紹介は、淡々と進んでいった。
私も別の仕事があるし、時間が有り余っている訳でもない。
特定のお客様に時間をかけるわけにもいかないのだから、まぁ当然だ。
さらさらと流れるように、大切なことだけ。
ルーレットから紹介を始めて、最後にポーカーのスペースで足を止めた。
「ここではポーカーを行っています」
手で差しながら、私は視線をそちらに向ける。
別のディーラーがパラパラと指先でカードを捲っている。
(……私もやりたいなぁ)
ぼんやりと、そんなことを考えてしまった。
ここのディーラーは、勝負を申し込まれれば共にプレイヤーとして参加することが出来る。
私もたまに参加するけれど、やっぱり最近のゲームは刺激性に欠けていた。
(……もっと、激動にまみれる勝負がしたいのに)
ぼんやりと、ただぼんやりと勝負中のボードを見つめていると、背後から空を切る様な溌剌とした声が上がった。
「俺！ ポーカーしたい！」
振り返ると、そこにはぱっと手を伸ばした赤いネクタイの男の人。
確かこの声は、私が最初に困っていると判断した人の声だ。
周りの３人は、一瞬ポカンとした後、直ぐに「いやいやいやいや！？」と無駄に多く「いや」を連呼していた。
よっぽど否定したいのだろう、語調も強かった。
「いや、坂田には無理やと思うで？」
「そーそー、ポーカーフェイスとかけ離れたお前ができるわけが無い」
「せやねぇ、無理せんとき、坂田」
次々と否定され、手を挙げていた人は少しずつむっとした表情になっていく。
ぷるぷると肩を震わせて俯いた後、ばっと顔を上げて「だー！」と声を上げた。
「うるさぁい！ やってみんと分からへんやんそんなん！」
まさに「ぷんぷん」という効果音が似合う形相で怒っているのを見て、私は乾いた苦笑いを零す。
……やっぱり、なんとなくカジノっぽくない人達だ。
「……よかったら、少しだけやりますか？」
「チップはとりあえず大丈夫なので」と付け足し、近くのボードからトランプを手に取って顔の横でひらひらと振る。
数秒後、４人の「えっ？」という声が寸分狂わず重なった。
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ゆうり - 初コメ失礼します！サンタクロースから読んでます！とても面白いです！応援してます！頑張ってください！ (2019年7月1日 17時) (
レス) id: 616da87ebb (このIDを非表示/違反報告)
甘夏れもん(プロフ) - 風空さん» 風空さん、ありがとうございます！ こちらの作品も頑張るので、どうかよろしくお願いします！ (2019年5月6日 9時) (レス) id: ba879bf840 (このIDを非表示/違反報告)
風空 - わ、新作……！私、甘夏れもんさんの前作の作品から見てて……新作って聞いて飛んできちゃいました！更新楽しみに待ってます！自分のペースで頑張ってください！ (2019年5月6日 2時) (レス) id: 7d8b5dcb68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：甘夏れもん | 作成日時：2019年5月5日 19時
