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1.つまらない ページ3

「それでは、ショウダウン」



それは、耳にタコが出来るほどに聞き、口に染み付くほどに言った言葉。


今日も私は、懲りずにその言葉を口にする。


同時に、目の前で向かい合って座る男性2人が、持っているカードをボードに広げた。


私はそれらに素早く視線を走らせ、特に反応することも無く言葉の続きを平坦に紡ぐ。



「宮野様、ワンペア。桜庭様、ツーペア。桜庭様の勝利です」



私が勝利を告げた男性は、小さく「よし」と声を上げる。


逆にもう一人は苦虫を噛み潰したように顔を歪め、舌打ちを響かせた。



(……あぁ、つまらない)



その様子を眺めながら、私は内心そんなことを思っていた。



ここは、国に存在を認められているカジノ、通称国営カジノ。


名前は「FAKE(フェイク)」。


私の父がオーナーを務める、大型のカジノだ。


つまり、私はオーナーの娘ということになる。


もっとも、私はそんな事心の底からどうでもいいのだけれど。


私はただただゲームを楽しみたいだけだから。



……けど、最近のここは酷くつまらない場所と化してしまっていた。


損失を小さくするために、リスクの大きな勝負はさっさと降りる。


みんなみんな、確実に勝てる勝負だけ強気に出て、少しだけ稼いで満足気に帰っていくのだ。


勝つか負けるか分からない、あのスリルが賭け事の楽しみだというのに。


しかも、その「確実」が本当に「確実」でしかないからつまらないのだ。



ほら、今日も。



「じゃあ僕はこれで失礼するよ」


「俺も。プラスなうちに帰るわ……」



稼げたから。損しないように。


そんなことを言って、そそくさと席を立ってしまう。


私は、そんな後ろ姿に深々と頭を下げ、



「またのご来場、お待ちしております」



そう言って微笑み、2人を送り出した。


2人が遠ざかり、誰もこちらを見ていないことを確認して大きく息を吐き出す。



「ほんと、つまんないな……」



嘆きにも似たその声は、カジノの止まぬ喧騒の中へ滑り込むように溶けていった。

2.少し違う4人組→←設定 ーProfileー



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ゆうり - 初コメ失礼します!サンタクロースから読んでます!とても面白いです!応援してます!頑張ってください! (2019年7月1日 17時) (レス) id: 616da87ebb (このIDを非表示/違反報告)
甘夏れもん(プロフ) - 風空さん» 風空さん、ありがとうございます! こちらの作品も頑張るので、どうかよろしくお願いします! (2019年5月6日 9時) (レス) id: ba879bf840 (このIDを非表示/違反報告)
風空 - わ、新作……!私、甘夏れもんさんの前作の作品から見てて……新作って聞いて飛んできちゃいました!更新楽しみに待ってます!自分のペースで頑張ってください! (2019年5月6日 2時) (レス) id: 7d8b5dcb68 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:甘夏れもん | 作成日時:2019年5月5日 19時

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