13音目 ページ16
『此処が蝶屋敷か』
「どちら様ですか?」
俺が門の前に立っているとツンとした顔の少女が話しかけてきた。
『新しく鳴柱になった響輝Aだ。蟲柱さんは?』
師範が予め日程を伝えてあると言っていたから、屋敷にいるはずだ。
「少々お待ちください」
少女は蟲柱を呼びに行く。
俺はここで待つのかよ。
そう思ったが口には出さない。
どちらにせよ検査があるから屋敷には入らねばならないが……
「お前が響輝Aか」
いや、声低いな
咄嗟に浮かんだ言葉をどうにかこうにか喉にとどめる。
そもそも屋敷からは誰も出てきていない。
俺は後ろを振り返る。
『派手に隈がやべえな』
「不満か?俺は気にしていない」
白衣に、まだこの国ではあまり馴染みのない洋服。
黒い髪、同じく黒い目の下には__かなりの期間休んでないのであろう、酷い隈だ。
顔つきは整っているが無愛想な雰囲気が漂っている。
「医者の辻秀一だ。お前が響輝Aだな?」
辻秀一はもう一度同じ問い掛けをしてくる。
俺は頷く。
『ああ。えーっと、秀一…さん?』
「どう呼ぼうとも構わない」
『じゃあ秀一で………いや、さん付けた方が…』
俺は少し悩む。
『いや!うじうじ悩むのは地味だ!秀一な!!』
「五月蝿い」
フン、と鼻を鳴らす秀一。
「お二人共、そんなところで何をしてるんですか?」
俺と秀一は玄関の方を向いた。
『派手に綺麗だな……っと、新しく鳴柱になった響輝Aです』
そう言うと蟲柱はフフっと笑った。
「はっきり聞こえてますよ?
蟲柱の胡蝶しのぶです。よろしくお願いしますね」
握手をして会釈。
チラリと秀一を見れば門の柱に寄りかかり空を眺めて欠伸をしていた。
『なあしのぶ、あの人いつもあんな感じ?』
「急に親しげになるんですね。
秀一さんですか?そうですよ。
いつも気だるげで患者を最優先にして自分が倒れてもお構い無しです。
この前なんか倒れたから休ませていたのに私が診ていた患者の声で起きて勝手に治療を始めたんですよ?」
ペラペラと話しニコニコと微笑んでいるしのぶと同じ方を向くと秀一が視線に気付いた。
「悪いか?」
『悪いだろ!派手に迷惑かけてんじゃねえか!』
「派手派手うるさいな……宇髄の継子か」
『今更だな!』
「宇髄から派手な部分だけ継いだんだな」
サラリと言う秀一。
『上手いこと言ってんじゃねえよ!俺はお師さんより派手だっての!』
俺の叫び声が屋敷に響いた。
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作者名:夜月 | 作成日時:2020年5月15日 1時