【男主】笑顔の仮面を貼り付けるピエロ【五奇人】

24つ目の仮面 ページ25

《照明の復旧完了したよ！》



『…ッナイス。

じゃ、新曲発表だな。流してくれ、あんず！』



《了解！》




これも、全部、五奇人と話し合った作戦。


もともと、今日は新曲を発表するつもりだった。




サビが歌えなかった分、新曲ならファンのみんなも許してくれるっていう考え。





「きゃー！！！」


「A様ー！！！！」




自作のうちわを振りながら叫んでくれるファンを見て、罪悪感しかなかった。


カメラを動かして俺を撮っているスタッフさんが見えて、申し訳なくなった。


無線で繋がってるあんずちゃんが、「がんばって」と呟いたのが聞こえて、返事ができなかった。




『…ッもっともっと、笑ってくれるよな〜！？！？


笑顔を見せてくれ〜！！！』



マイクで叫べば、黄色い歓声が大きくなる。



ごめんな、本当に、ごめん。



利用しちまってるな、これ。

みんなは、純粋に俺のライブを楽しもうとして、時間を作って、金をかけて、きてくれてる。


たった一つのライブを成功させようと、色んな人が関わって、頑張ってくれてる。



なのに、俺は…




このライブを、妹の更生に、使ってる。




許してくれ、なんて言ったって微妙な顔すると思う。

だったら、どうしたら許してもらえる？



そんなん、




最高のパフォーマンスするしか、

楽しかった、良かった、って笑顔になってもらうしか、



ないよな。




新曲が始まって、歌う。踊る。



先程まで消えていた照明が、一つずつ、俺に向かって光り輝く。




汗が、流れてく。




新曲が終われば、このライブも終わる。






俺は、あいつの心に響くように、ライブができただろうか。








新曲が終わって、笑顔で深く礼をする。



次の瞬間、聞いたことのない音楽が流れ出した。





…えっ、な、えっ？


本当の、ハプニングか…？



《Aくん、びっくりしてていいよ。


踊らなくて、笑わなくていいから。

そのままで。》



あんずちゃんから無線が入ってくる。


でも、あんずちゃんがびっくりしてていい、なんて言ったことにもびっくりだ。



俺が訳分からなくて、固まってるのを見て、お客さんたちも、ハプニングか何かとざわめき始める。




…やばいな。





「…Amazing☆


お待たせしました皆さん！！」






………薔薇が舞っているのを見て、その声を聞いて、俺はなるほど、と理解した。

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