第24話 ページ26
貴｢うぉお……｣
時計の針は夜九時を指す。
私は床にベッタリと倒れた。ああ、ひんやりしていて気持ちがいい。
羽風薫は、水を持ってくるねとその場を去る。死にそうな枯れかけの声でありがとう…と呟いた。
朔間｢お疲れ。嬢ちゃん｣
貴｢どーも…というか、素人なんですからもう少し優しくしてもらえませんかね？｣
朔間｢おや？そっちの方が良かったかえ？｣
貴｢冗談が通じない人でしたっけ？｣
朔間｢冗談を冗談で返しただけじゃよ♪｣
貴｢怪しいなぁ…｣
彼に手を借りながら立ち上がるが、ヘタリと床に座り込む。ぐっ…と力を込めるも、立ち上がれない。
朔間｢くくく…嬢ちゃんもまだまだじゃのう？｣
面白そうに笑う朔間先輩を下から睨みながら、しょうがないでしょう。と、力を込める。
朔間｢嬢ちゃん｣
貴｢はい？｣
ぐんと引き寄せられ、私は朔間先輩の腕の中にいた。倒れないように腰に手を回され、余計に近い。
朔間｢嬢ちゃんは本当に薫くんが好きか？｣
貴｢は？｣
朔間｢嬢ちゃんを掻き立てる衝動は本当に薫くんか？それとも、ただの感情か？｣
貴｢…｣
分からない。
私にはこの感情にどう名をつけて良いのか分からない。
貴｢羽風薫が私の想いに答えてくれるそれまでに、私もきちんと答えを出します｣
朔間｢…そうか｣
夜月に当てられた彼の微笑みは、見たことのない、悲しい魔物だった。
帰ってきた羽風薫がなんで抱き合っているの！？と私たちを引き剥がし、私は尻餅をつく。
別れ、私は羽風薫に背負われながら家路へつく。
ここにある彼の全てを取り込みながら、自分の感情に、寄り添ってみる。
一定の速度で大きく鳴る鼓動と、汗の混じった落ち着く匂いだけが、静寂な夜に漂っていた。
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作者名：�� | 作成日時：2018年4月22日 13時
