あんスタ【世界は動いている】2 (ページ21)

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第59話ページ21

羽風｢何か、不思議な雰囲気をまとう女の子だったね…？｣

貴｢まぁ…昔から、あんな感じっすから｣

出番までもう少し。

深海先輩と、仁兎は外の空気を吸ってくると、会場の外へ出ていった。

羽風薫は緊張するだろうからと、要らぬ世話を焼いて、私の隣に立っている。

貴｢私の想いを残せるのは、今しかない…か｣

私の番号が来た。

羽風｢頑張ってね｣

貴｢はい｣

椅子に座って、順番を待つ。

読み終えた人から会場を出、一人ずつ椅子を詰めていく。

どんどんと、ステージが近づいていく。

特に合図はない。また始まりと終わりの礼もいらない。

自分の好きなタイミングで…。

貴｢…ｽｩ｣

大きく息を吸い込む。

貴｢118番。久世A｣

よーいスタート。
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深海｢どうしてAさんは、『ばんぐみ』をつくれなくなってしまったんでしょうね｣

仁兎｢さぁ…。おれが聞いたのは、最悪の作品を作ってから、何をしていいか分からなくなったから、だった｣

夏の涼しい風が２人の髪の毛をすり抜けて、頬を撫でる。

うるさいくらいの青が、空一面に広がっている。

深海｢Aさんをしばっているのは、『めいかく』なものではなく、『あいまい』なものなんですね｣

仁兎｢…言葉では言えない重りが、アイツを苦しめているんだと思う｣

新緑の葉を散らしながら、夏疾風が、振り抜けた。

乾いた心には、じゅうぶんな風だ。