あんスタ【もう1人の転校生】9 (ページ15)

今日:6 hit、昨日:13 hit、合計:40,765 hit

第92話ページ15

瀬名｢あんたは、頑張ってるよ｣

耳に直接届く声。

聞き慣れた優しい声。

瀬名｢誰よりも努力してるし、誰よりも練習してるし、誰よりも自分の仕事に信念を持って闘ってる｣

心地の良い相手の心音に耳を傾ける。人の声が遠ざかっていく。

瀬名｢いつも一生懸命で、いつも楽しそうでさぁ…俺がいくら頑張っても、出来ないことを簡単にやってのけて…｣

今は、この人の声しか耳に入らないのは何故なのか。

瀬名｢傷ついても仲間のために走って、怒って…馬鹿じゃないのって思った｣

体が少し離れて、整った顔があたしを見る。

瀬名｢ファンサはどこでも欠かせないし、他の生徒達には挨拶するし、ベタベタしてくるし…ほんと、チョ～うざぁい…｣

額同士が触れ合って、自然と瞼が閉じた。

瀬名｢自分のために少しは生きなさいよ。あんたの人生は、もうあんただけのもんじゃない…なんてのは嘘だ。あんたの人生は誰がなんといっても、あんたのもんだよ｣

頬に温もりが触れて、指先がそっとなぞってくる。
擽ったくて、でも何だか安心して触れる掌に頬をすり寄せる。

瀬名｢ワガママ言っていいんだから。一人になりたい時は、俺が隠してあげる。俺が、Aを守ってあげる｣

クイッと顎を持ち上げられて、鋭い青があたしの瞳を貫いて言った。

瀬名｢だって俺は、騎士だもんね｣

ギュッと抱きしめられる。

貴｢守ってあげなきゃなのは、月永、でしょ…｣

瀬名｢王様も1人の騎士でしょお？少しは自分で守れるようになんなきゃダメ｣

貴｢あたしだって、騎士だし…｣

瀬名｢元、でしょ？今は、Knights(おれたち)のお姫様｣

膝をつき、片膝を立て、あたしの手を取り甲にキスを落とす。

姫に忠誠を誓った騎士(ナイト)。

貴｢…うんっ｣

瀬名に飛びついて首元に手を回す。あたしを抱き締め返した瀬名と体温を分け合う。

その様子を見ていたKnightsのメンバーは、持ってきた手土産をいつ開けようかと決めたようだ。