第47話 ページ10
｢A〜！｣
｢お前、あの話ホントなのか！｣
噂とは回るのが早く(この時代、SNSなどで拡散が早いため)、もうすでにこの学校…いや、他の奴らもだろうがどうやら知っているらしい。
朝っぱらからあたしの席に群がる生徒達に、曖昧に言葉を濁しながらあたしはワンツーで立ち上がり、よーい、スタートで逃げる。
貴｢も〜…勝手なことばっか、すんなっての｣
到着したのは屋上。足に何かがひっかかり、転けそうになるがなんとかセーフ。振り返ると、足元に落ちていたのはサーフボード。汚れてるけどね。
書きなぐられている罵詈雑言。そして、特定の名前。
貴｢羽風…薫………｣
近くにあったホースと水道。そして、デッキブラシ。
脱いだ上靴の中に靴下を丸めてつっこんで、制服の袖を肘上までまくる。
水を流しながら、ブラッシング。水性だったのか案外簡単に黒い液体となって流れていった。
静かな空間に水と、ブラシの音が鳴る。
貴｢はぁ…何やってんだか…｣
前のクラスメイトにもこんなことされてる奴がいて、よく助けたのを覚えている。
でもその子は、七瀬に目をつけられて…自分の命を自分で絶った。
残された最後のメッセージ。クラスメイトへのお別れと、あたしに対する感謝の言葉。
みんな泣き崩れて、顔をぐしゃぐしゃにしていた。そんな中、あたしは拳を握りしめて立っていた。
あたしが助けられなかった生徒は何人いたのかな。
あたしが殺した仲間は何人いるのかな。
あたしは、アイドルになって何がしたかったのかな。
質問を問いかけて答えてくれる人は誰もいないとわかっているのに、解答が欲しい。
『正解』と『正答』って、何が違うんだろう。
あれ…？
あいつは、なんて言ってたっけ。
うるさい夏のセミの鳴く懐かしい思い出の中で、
ミウラは、あたしになんて言ったんだっけ？
｢A？｣
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作者名：�� | 作成日時：2017年7月9日 0時
