第42話 ページ5
夜も暗くなり、あたしは瀬名に送ってもらえることになった。
まぁ、途中まで一緒だしね。
瀬名｢にしても、あんたはどんなハプニングにでも対応できるわけねぇ…｣
貴｢そりゃあ…やっぱ高校入ったばっかの時は嫌がらせされたりしたしさぁ｣
それはきっと瀬名も経験したかもしれない。綺麗な顔が歪んでいる。
貴｢お陰様で？って感じ｣
瀬名｢今のあんたがあるのも、そのお陰なのね｣
その言葉は、なんとなく心が暖かくなった…と思う。
なんだろう。今までのってさ、あれじゃん。過去があったからこそっていうか…積み重ねてきたものがあるからっていうか…。
貴｢瀬名｣
瀬名｢なに？｣
貴｢ありがとう｣
瀬名｢な、なに、いきなりぃ？｣
貴｢瀬名は、あたしのこと対等に見てくれたもん。ほかの人達はやっぱなんか、一目置くっていうか…。距離があったっていうか…なんか、瀬名には、普段のあたしでいられた気がするんだ｣
瀬名｢なにそれぇ…｣
夏が過ぎても、まだ少し暑い季節。瀬名の顔は、夜の街灯の微かな光でも分かるくらいに真っ赤だった。
どうかしたのか？と聞くと、口元を覆って目をそらし、なんでもないと言う。風邪かと手を伸ばす。
その手は掴まれて、行き場をなくした。キョトンとしていると、瀬名が掴んだあたしの手を引き寄せて掌になにか、柔らかいものが当たる。
貴｢ふぁっ！？｣
多分、瀬名の唇だ。
ゆっくりと、ゆっくりと青い瞳があたしを映す。青い影に一筋の光が射し込み、艶やかに魅せる。
真剣な眼差しと、熱くなる手の温度。鼓動が高速で跳ねて、マグマのようにドクドクと耳元で鳴り響く。真夏に聞いた蝉の声よりもうるさい。
瀬名｢…ねぇ｣
貴｢なっ、なに？｣
声が上ずった。恥ずかしい、でも頬の熱さは羞恥じゃない。
音が消えるくらいに心臓の音がうるさくて、あたしの掌からだんだんと覗いてくる瀬名の口唇が震える。
近づいてくる。見目麗しいその顔が。
ぎゅっと目を瞑った。
でも、想像したものとは違い、小さい痛みが額に走る。
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作者名：�� | 作成日時：2017年7月9日 0時
