第73話 ページ36
貴｢うへぇ…｣
あたしは両腕に震えた子ウサギを抱えて、人気のない通路の壁によりかかり座っています。
とめどなく流れる汗が弟の制服に染みる。
赤井｢A、しぇんぱい〜｣
青井｢ふぇ〜ん｣
あの日からずっと泣きっぱなしの二人。どうして仕事を受けたのか聞いてみると、こういう時だからこそ頑張らなければと思ったらしい。
劣等生を脱却するために、LEONの資金のために少しでも仕事をして名を広めたい。切実な願いだったろう。
しかしそんな純粋な思いもこうやって潰す奴がいる。裏に手を回したのは恐らく七瀬だ。
天真爛漫･自由奔放･天使のような可愛さを兼ね備える青井と赤井。LEONの裏の二本柱だ。折れれば…想像してもゾッとする。
精神はもうボロボロで、もはやきちんとした判断もできない今を狙ったのか。
この件で蓮が精神的に不安定だということがわかった。あいつなら、こんな失敗は絶対にしない。
とにかく人気のある場所に行きたいと願い、あたしは二人に走れるか？と微笑む。
青井は小さく何度も頷いた。二人の腰に手を回してゆっくり立ち上がらせる。だが、左腕が重い。赤井が立ち上がらないのだ。
貴｢あかっ｣
赤井｢なんで｣
ルビーのような綺麗は瞳は、真っ赤に腫れていた。
赤井｢なんで、私たちばっかこんな目にあわなきゃいけないの…普通にアイドルになりたかっただけなのに、A先輩みたいになりたかっただけなのに｣
全身が助けを訴えてくる。
赤井｢こういうことまでしないといけないの！？アイドルになるために、暴力を受けなきゃいけないの！！なんでなの！｣
呂律が回らなくなり何を言っているかもわからない状態になってきた。赤井を宥め、今は逃げることだけ頑張ろうと無理やり立たせる。
これは背負った方がいいだろうか…考えていた時、
青井｢私……アイドルなんかにならなければ良かった｣
思考が止まった。
あたしはアイドルになって、いつしか、みんなの憧れになりたかった。笑顔にさせて、元気にさせるような、夢みたいな話を叶えたかった。
あたしは、結局…
笑顔だの、元気だの、夢だの云々の前に何一つ幸せにしてやれてないじゃないか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：�� | 作成日時：2017年7月9日 0時
