第66話 ページ29
OXの事件は外部だけてはなく、内部にも亀裂を走らせていた。
花ヶ咲学園にて。
蓮｢…｣
｢ねぇ聞いた？｣
｢聞いた。雄牛さんの件でしょ？｣
｢酷いよね〜メンバーいないのにライブするとか｣
｢調子乗ってんじゃないの｣
ヒソヒソと伝わってくる陰口。ガタン！と立ち上がり、蓮は自席を立った。その音にクラスは静まり返り蓮が出ていけば悪口のボリュームは大になる。
5階の空き教室。LEONのレッスン室の扉を開けると、そこには目を疑う光景があった。
文化祭の衣装がボロボロに切り裂かれていたのだ。
蓮(OXが、作ってくれたのに…)
まだ糸が解れている衣装を拾う。抱きしめて、床に膝をつく。
蓮の視界はボヤけ、眼鏡のレンズに水滴がポツポツと落ちた。声の出ない涙。心が苦しくて、嗚咽すらもれない。
｢何泣いてんだよ｣
蓮｢っ｣
振り返った先、壁に寄りかかって腕を組んで立っている男。Lieリーダー『榊 礼斗』だ。
メガネを外し、袖で拭う。泣いてないわよと蓮は立ち上がった。振り向いた顔は凛として、いつもの蓮だ。
榊ははんっと鼻で笑い、近くに落ちていた無惨な衣装を拾う。
榊｢ひでぇなこりゃ｣
蓮｢そうね。犯人なんて探している暇はないし…OXが回復していない今は、私が作り直すしかないわね｣
榊｢お前が？裁縫とか、苦手じゃなかったか？｣
ぐっと蓮は黙った。そう。蓮はまとめるような『リーダー的仕事』は効率よく完璧にこなすのだが、不器用で細かい作業などは苦手。
榊｢お前なぁ｣
盛大なため息をついた榊にカチンときて、蓮が何よ。悪い？と口を尖らせる。
榊｢頼れる奴は、ちゃんと頼れよ｣
八重歯を見せながら、榊は向日葵のようにニッコリと笑った。
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作者名：�� | 作成日時：2017年7月9日 0時
