第67話 ページ29
鳴上｢あら、Aちゃん♪｣
放課後。レッスン室に行く途中の階段でバッタリと出会った。鳴上の後ろには、眠そうに目を擦る朔間弟の姿もある。
貴｢よっ！てか、朔間！あんま、目ぇ擦ると赤くなるよ？｣
その手首を掴み、擦るのをやめさせる。ん〜っと、朔間弟はボンヤリした目であたしを見たかと思うと、
凛月｢…美味しそう｣
牙をチラつかせて、あたしの首元に近づいてくる。
貴｢アホウ｣
コツンと朔間弟の頭を拳で殴る。軽い痛みを大袈裟に表現して、朔間弟は拗ねてしまった。
鳴上｢もぅ！凛月ちゃん！寝ぼけないでよぉ｣
貴｢そそ。ほら、拗ねんなって、ごめんって！行こ？｣
手を差し伸べれば、朔間弟は渋々あたしの手を握り返してくれた。それをグンッ！と引き上げて、背負ってやる。
鳴上｢あら。Aちゃん、力あるわねぇ♪｣
貴｢あったりまえっしょ！今までどれだけ、訓練したと…｣
凛月｢訓練？｣
口を閉じた。
そうだ、別に、あたしだけじゃない。
貴｢ううん。何でもない！｣
少し足を早めて、あたしはレッスン室の扉を開ける。そこには、もう他のメンバーは揃っていた。
朱桜と瀬名はストレッチ。月永は相変わらず、自由な作詞作曲。
散らばった楽譜を踏まないように入り込んで、朔間弟を床に下ろした。一度、背伸びをして、あたしは捨てられた紙を拾っていく。
気配に気づいた月永がいきなりこちらを振り向いた。顔と顔の距離が近くて、目がバッチリと合っている。
な、なんだ。見られてから数分経つぞ、なんだ？
変に汗がダラダラと流れる。すると、月永は、あっ！と大声をあげた。唐突のことだったので身構えていなかったから、外には出さなかったものの心臓が大きく跳ねる。
月永｢A！お前、仕事をオーケーしてくれたんだってな！｣
貴｢え？あ、あぁ、まぁね？｣
月永｢いやぁ！お前がイエスを言ってくれなかったらどうしようかと思ったぞ！俺達の仕事がなくなるからな！｣
陽気に笑う裸の王様の一言は、すぐにこの場を凍らせた。まるで、死刑を命じたかのように。
ああ、嫌な汗が流れていく……(´・ω・`;)
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作者名：�� | 作成日時：2017年5月28日 22時
