黒執事【その執事、再び】 (ページ20)

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第18話ページ20

ｶﾗﾝ…

貴｢流石元執事。美味かった｣

ｾﾊﾞｽ｢それは光栄でございますね｣

皿を重ねて洗い片付ける彼。

リビングには水音だけが聴こえていた。

アタシは自室へ向かい、棚の奥にあるアルバムに手を掛ける。

パラリと開けばそこにある写真。

父と母と、アタシと兄と写った家族写真。

もう二度と会えない家族……

涙すら枯れてしまったあの日に。もう一度戻れるのなら…

貴｢アタシがこの手で…｣

ｾﾊﾞｽ｢お嬢様｣

耳元に突然聞こえた声にアルバムを投げつけた。

声の主セバスチャンには華麗に躱され、壁に当たったアルバムが写真を散らす。

ｾﾊﾞｽ｢お嬢様のメモリーですか？｣

貴｢貴様…ノックくらいしろ！！｣

ｾﾊﾞｽ｢致しましたが反応が無かったものですから死んだのかと思いまして｣

こいつ……

気づかないほどに、過去に浸っていたのだろうか。

後悔など無いはずなのに…

心臓が苦しい。

ギュッと胸元を抑えた。

ああ…

アタシはまだ、ここで生きているのだ…

どうして、アタシだけが…アタシだけが、生き残ったのだろう。

違う。

生きる事を願ったのはアタシじゃないか。

貴｢セバスチャン｣

ｾﾊﾞｽ｢はい？｣

貴｢お前だけはアタシをどうか…｣

言いかけた言葉を飲み込んだ。
いずれ、アタシは死者となる。悪魔(ｺｲﾂ)に食われるのだ。

ならば、言う必要は無い。

セバスチャンは片膝を立ててアタシの手を取りその甲にキスを落とす。

ｾﾊﾞｽ｢Yes,my lord｣

全てを諭した悪魔の微笑みは何故か目元と心を熱くさせた。