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まだAは入学したばかりだったのに。
「好きなやつって誰だ??」
『3年の人!』
きっとおれの知らない奴だ。
おれの知らないところで、知らない奴と仲良くなって、おれの知らない恋愛をAは始めた。
そう考えたら少しモヤッとした気がして、だけどその時は気づかないようにそっと蓋をしたんだ。
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ある日の放課後、いつも通りAと帰るために下駄箱に向かっていた時。
玄関前で先に立って待っていたであろうAを見つけておれは声をかける。
「Aお待たせ!帰ろ!」
『...』
だけど反応はなくて、おーい!って声をかけてもやっぱり反応は無い。
「あ...」
ただじっと見つめるその視線の先をたどれば、楽しそうに会話をしながら下校する男女が居て、ちらりと見えたリボンとネクタイは3年生の色を示していた。
お揃いのキーホルダーも...目に入ったんだ。
きっとあいつだったんだ、Aの好きなやつ。
「A」
『...あー、えへへ。部活の先輩なんだ!あの人。...そっかぁ、付き合ってるのかなぁ...あはは、知らなかったなぁ』
おれがもっと早くここに来てれば
Aは好きな人に彼女がいるとか気づかなくて済んだのかな
おれがもっと____
あいつなんかより先にAに振り向かせてたら。
『...レオくん?』
「おれ、Aのことずっと前から好きだった。」
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作者名:なこ | 作成日時:2023年1月29日 20時