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視線すら、合うことは無かった。
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教室に足を踏み入れ自席に近づけば、隣のソイツは既にそこに居てボーッと外を眺めている。
こんなの何時もの事だった。けれど、今日ばかりは気になるところがひとつあって。
「寝癖、ついてるんだけど。」
『え？』
不意を突かれたのか、ソイツ…瀬戸Aはこちらに振り返る。
それと同時に、昔から散々自慢されたパールホワイトの髪に手を伸ばして飛び出たソレに手櫛を通す。
人間離れしたその髪は、相も変わらず引っかかることも無くスルスルと、そして利口な事に数回で直ってしまう。
今は所謂セミロング、という程の長さだけど、昔はそれなりに長くて「綺麗だ！」と定評もあったのに。
ある日突然、こいつは髪を切った。それも、残酷な程に酷いやり方で。
ふと、脳裏にその時の映像が流れかけて、不快になりかけたから大人しく手櫛を通されていた瀬戸Aに嫌味半分に言葉をかける。
「…あんた、髪は綺麗なんだから寝癖ぐらい直しなよね。仮にも女の子でしょ。」
『…ありがと』
視線すら、合うことは無かった。お礼すら、こいつはまともに言えなくなっていた。
苦しい、不快ったらありゃしない。
それ以上、何かを言うことも何ならかける言葉すら見つからなくて、遂に俺は自席へ腰をかける。
チラッと隣を盗み見れば、ソイツは突っ伏していて、折角直したばかりなのに、とまるで母親のように小言が頭に浮かぶ。
「授業前には起こしてあげる。」
優しさを掛けたつもりはなかったし、案の定返事もなく終わってしまった。
別に、隣の席にしたやつの事は憎いとは思わない。恨めしい、とも。
寧ろ感謝している所ではあった。
必死で他人を守り、自分を投げ出しボロボロになって、崩れ落ちて。
もう1人で前を向けなくなったこいつを、野放しにする訳にも行かず、隣で逐一様子を見れた方がよっぽどいい。
「(全部、それぞれが間違っていた。って事なんだよねぇ？)」
言葉にすることも無く、心に留めて俺は席に肘を立て頬杖をつく。
予鈴がなり、HRをする為担任が教室に入ってきたけど、授業が始まる訳でもないから、隣で寝ているであろうソイツに声を掛けるなんてことはしなかった。
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なこ(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます~！そう言ってもらえて嬉しいですっ！これからも是非読んでやって下さい…！ (2023年3月6日 21時) (
レス) id: b90089acae (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - ほんとにこの作品に出会えて良かったです！！設定からお話全てが最高です！！！陰ながら応援してます！！ (2023年3月4日 23時) (レス) @page34 id: 6a12c2dc89 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - お醤油さん» わー！コメントありがとうございます！個人的にはもう終わりまで決まってるので、スピード完結しそうですがこれからも、是非読んでいただけると…！頑張りますっ！ (2023年3月3日 23時) (レス) @page5 id: b90089acae (このIDを非表示/違反報告)
お醤油 - もう本当に面白いです！一気にスラスラ読んじゃいました！もう設定から好きすぎる…これからも作者様のペースで更新頑張ってください！応援してます！ (2023年3月3日 21時) (レス) id: b53313ac14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なこ | 作成日時：2023年2月27日 19時
