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『ありがとう、瀬名くん』
｢別に、お礼言われるほどじゃないけどぉ。連れてきたのは俺たちなんだし。｣
帰ろうとした瀬名くんを引き止めたのは月永くんだった。
スマホをどこかに置いてきてしまったらしく、咄嗟に引き止め、結局カフェで曲のイメージやらなんやらを決めていた。
あたしはそれを片耳から片耳へ聴き流し、黙々とりんごジュースを味わった。
そして、退店際にお財布を出そうとしたら、｢これくらいいいから｣と手元を押えられて、難なく奢られてしまった。
10月の月末より少し手前
17時にもなると、もう辺りは暗くなり始めていて、冬が近くなってきているのを実感する。
｢…外暗いし、送ってくよ。｣
『え、いいよ、大丈夫。』
｢おれも送ってくぞ！流石に女の子一人は危ないからな〜？｣
先程までしゃがみこんで作曲に耽っていた月永くんまで立ち上がり、ウンウンと頷く。
そしていとも簡単にあたしの手を取り、グイグイと引っ張って迷いもなく家のある方向へと歩き出した。
あたし達が月永くんの家に足繁く通ったように、あたしの家も例外では無いのだ。
『(痛っ…)』
そう考えたら、胸がチクンと痛んだ。病は気から、なんてこーゆー事なのかもしれない、とあたしは心の中で自分を嘲笑う。
｢あ、あの……！｣
｢ん？｣
『？』
不意に、目の前から歩いてきた女子高校生たちに、すれ違いざまに声をかけられた。
もしかしたら他の人に対して放った言葉だったのかもしれないけれど、たった今近くにいたのは自分たちなわけで、あたしたち3人は振り返る。
女子高校生たちは、あたしたちの顔を再度認識したのか何なのか、パッと目を輝かせて前のめりになった。
｢も、もしかして…月永レオくんですか！？｣
｢お、おお、そうだけど……あ、もしかして…Knightsの"お姫さま"か？｣
｢は、はいいぃ…！｣
どうやらKnightsのファンだったようだ。気づけば瀬名くんも1人の女の子の相手をしていて、あたしだけポツンと立ち尽くす。
あぁ、活動していない者の運命なのだ、と厨二病くさいことを考えながら、1人で帰ってやろうかなと軽く1歩踏み出した時。
｢あ、の…瀬戸Aちゃん、ですよね？｣
『え？』
目の前にピョコッと現れた1人の女の子は、モジモジと俯きながらあたしに声をかけてきた。
その子の鞄には、いつ出たのかも忘れてしまった、かなり初期のあたしのグッズが付いていた。
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なこ(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます~！そう言ってもらえて嬉しいですっ！これからも是非読んでやって下さい…！ (2023年3月6日 21時) (
レス) id: b90089acae (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - ほんとにこの作品に出会えて良かったです！！設定からお話全てが最高です！！！陰ながら応援してます！！ (2023年3月4日 23時) (レス) @page34 id: 6a12c2dc89 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - お醤油さん» わー！コメントありがとうございます！個人的にはもう終わりまで決まってるので、スピード完結しそうですがこれからも、是非読んでいただけると…！頑張りますっ！ (2023年3月3日 23時) (レス) @page5 id: b90089acae (このIDを非表示/違反報告)
お醤油 - もう本当に面白いです！一気にスラスラ読んじゃいました！もう設定から好きすぎる…これからも作者様のペースで更新頑張ってください！応援してます！ (2023年3月3日 21時) (レス) id: b53313ac14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なこ | 作成日時：2023年2月27日 19時
