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会場が大きく揺れた。そう感じるくらいの大きな歓声に思わず耳を塞ぐ。
正面モニターには「Lose 瀬戸A」と左下に小さく表示されていた。
俺はすぐさま席を立ち、出口へと足早に向かう。
後方からは勝者である天祥院が、誇らしげに何かを語っていたけれど、そんなのにイチイチ耳は貸してやらなかった。
会場を出たら、真っ直ぐ学院内に入り、Aが使っている控え室へと歩みを進めた。
そして目の前の扉のドアノブに手をかけて、少し開きかけたところで、俺は手を止める。
「(なにしてんの？あいつ。)」
ラックに掛けてあった衣装を、ひとつひとつ、やがて、全部床に放り投げて、近くにあった何かを手に取り床に座り込む。
そして次の瞬間、その「何か」を勢いよく衣装に振りかざして突き刺し、布が切れる特有の音を立てて、破り裂いた。
あまりにも衝撃的なその光景に、また俺は立ち尽くす。あの時、れおくんが壊れていく様を見ていた時のように。
また声をかけれず、手を差し伸べることもできず、ただAが壊れていく様を、この目に焼き付けていくだけ。
閉ざされた俺の口は、肝心な時に大事なことを、こいつらには伝えてくれない。
涙を流して、呼吸を荒くして、大事な衣装を、…思い出を切り裂くコイツに、「やめろ」という何とも簡単な3文字も、口にできない。
『うあぁぁぁぁあ！！！』
初めて聞く大きな声だった。出会った時から1度も聞いた事のないその声は、悲痛の叫び。ずっと隣にいたはずだったのに、俺はまた失った。
俺のちっぽけで安っぽい願いが、こいつら2人を殺したんだ。
れおくんとAは気に食わないやつをどんどん蹴散らして行って、俺は爽快だったけど、壊れてしまうくらいなら願わなかったのに。
平和でいい、それ以上を望まなければよかった、と後悔をする。
Aの衣装が、Knightsの衣装が、バラバラに切り裂かれて無惨に床にちらばっている。
ひとしきり嗚咽を漏らしたところで、Aが何かに気づいたのか、再び『ハサミ』を片手に、空いた片手でその髪を掴む。
「(なっ…！？)」
"あたしの髪はね、唯一の長所で自慢なの。ママとパパとお揃いの、自慢の髪。"
そうやって嬉しそうに、誇らしげに笑って俺たちに言ったはずなのに。迷いもなく、けれど酷く苦しそうに、Aはその髪をバッサリと切り落とした。
そして次は己の首に、その先端を向ける。
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なこ(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます~！そう言ってもらえて嬉しいですっ！これからも是非読んでやって下さい…！ (2023年3月6日 21時) (
レス) id: b90089acae (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - ほんとにこの作品に出会えて良かったです！！設定からお話全てが最高です！！！陰ながら応援してます！！ (2023年3月4日 23時) (レス) @page34 id: 6a12c2dc89 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - お醤油さん» わー！コメントありがとうございます！個人的にはもう終わりまで決まってるので、スピード完結しそうですがこれからも、是非読んでいただけると…！頑張りますっ！ (2023年3月3日 23時) (レス) @page5 id: b90089acae (このIDを非表示/違反報告)
お醤油 - もう本当に面白いです！一気にスラスラ読んじゃいました！もう設定から好きすぎる…これからも作者様のペースで更新頑張ってください！応援してます！ (2023年3月3日 21時) (レス) id: b53313ac14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なこ | 作成日時：2023年2月27日 19時
