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『水に触れたい。』
Aは俺の方を向かずポツリと呟いた。そして、繋がったままの手を引っ張り砂浜までかけ下りる。
声を出す直前まで横目で眺めたAの目は、寂しさか、悔しさか、はたまた別の何かで潤んでいて、きっとそれを誤魔化したかったのだと悟った。
「はいはい、仰せのままに、女王さま。」
だから俺は止めることも無く、手を引かれるがままに砂浜まで着いていった。流石に、シーズン前の海に入る勇気はなかったけれど。
パシャパシャと水遊びをするAは、その容姿のせいか、幼い女の子のようだった。時折、『冷たっ』と小声で漏らす癖に、戻ってこないところが余計子供っぽい。
しかし、別の言い方をすれば宛ら「天使」のようで。昔、抗争時代の後半で、「血染めの天使」なんて呼ばれていたのが今になって頭によぎる。
この、夕焼けのせいで、Aが紅く染められていくから。
あんたといると、なんとも言えない気持ちになる。だけど、アイツが残していった青春の残骸だから、手放すにも手放せなくて、離れれば楽になれると分かっているのに離れられない。
『うぅ、冷たい。皮膚が痛い。』
「馬鹿だねぇ、全く。」
冷たさに耐えきれなくなったAが半泣きしながら、海から上がってきて、もう冬でもないからカイロなんて持っていないし、とりあえずAの鞄にはいってたタオルを手渡す。
俺が勝手に中を見た事に何も触れなかったから、こいつの危機感やらなんやら、本当に女の子なのかを疑ったけど。
"アイドルを殺す、血染めの天使。"
タオルで足を拭くAは、じっと見つめる俺を不思議そうに首を傾げた。そしてその視線をすぐに逸らす。
望んで手に入れた異名じゃない。他者の悪意と、他者の思惑で付けられた不名誉にも等しい異名だ。
なのにこいつは、それを受け入れて、やがて崩れ落ちて壊れた。自分のクビを自分で絞めた。
そして残されたのは、ぽつんと空いた2つの玉座と駒が3つ。
何もかも壊した、失い、失わせた、自分のせいだ、と今でも自分に呪いをかけている。
タチの悪い事に、自分にかけた呪いは、さも当然かのように正当化し、普通の人間ならおかしいと思う事に、こいつは気づけていない。
『さっきからなぁに？変なのついてる？』
「あながち間違いじゃないかもね。」
『え！？瀬名くんってもしかして、見えちゃう系？』
…ほら。こーゆーところ、ほんっと。タチ悪くてチョ〜うざぁい。
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なこ(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます~！そう言ってもらえて嬉しいですっ！これからも是非読んでやって下さい…！ (2023年3月6日 21時) (
レス) id: b90089acae (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - ほんとにこの作品に出会えて良かったです！！設定からお話全てが最高です！！！陰ながら応援してます！！ (2023年3月4日 23時) (レス) @page34 id: 6a12c2dc89 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - お醤油さん» わー！コメントありがとうございます！個人的にはもう終わりまで決まってるので、スピード完結しそうですがこれからも、是非読んでいただけると…！頑張りますっ！ (2023年3月3日 23時) (レス) @page5 id: b90089acae (このIDを非表示/違反報告)
お醤油 - もう本当に面白いです！一気にスラスラ読んじゃいました！もう設定から好きすぎる…これからも作者様のペースで更新頑張ってください！応援してます！ (2023年3月3日 21時) (レス) id: b53313ac14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なこ | 作成日時：2023年2月27日 19時
