【マギ】君の毒 (ページ48)

今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:110,549 hit

四十八ページ48

「何見てたんだ？」

神官殿は私が見つめていたところを見ながら聞いた。そこにはもうあの子はいない。

「いえ、なんでもありません」

「ふぅん」

第二皇子練紅明殿下は強烈な姿をしていた。

論功行賞の式典では髪がボサボサだったり、衣服がグシャグシャではなかったと思う。

「紅明大丈夫か～w」

神官殿は面白がりながら云った。

「軍議……」

ボソッと呟いて、180度体が回った。おそらく私たちに背中を向けた。長い髪で顔や衣服が覆われているせいで前か後ろかは正直わかりにくい。

「こりゃダメだ。やっぱ紅炎に頼るしかねーかな」

「そうですね…、とりあえず休眠をお取りになった方が良いのでは…」

「だな」

私は近くにあった少しボロついた布をかけた。

あの布でよかったのかはわからないけれど、皇子殿下が何も云わなかったのでそのままにした。

続いて向かった紅炎殿下の書斎は相変わらず書物の匂いで落ち着く。

紅明殿下とは違って髪や服は整っていた。

神官殿は私のことを話した。

「構わん。だが時間のある時だけだ。今日はもう時間はないが、明日の昼食後なら空いている。武道場へ来い」

「はい」

そうして書斎を出た。

神官殿はこれから仕事なので別れた。

私は自室の近くの広場で『金属器』の鍛錬をした。

少し触れるだけで体の中にある何かが抜けていく気がした。それと同時に氷が出てきた。

『ロノウェ』は神官殿の云う通り、氷の能力だった。

刀の形を変える…、目標はそれだ。

神官殿が教えてくれた『武器化魔装』という類のものではなく、持ち歩く時など、身につける時に変えることだ。

一度リラックスをして考えた。

むやみに魔力というものを出し続けては効率が悪い。『魔力操作』を身につけなければならない。

『ロノウェ』を持つ掌だけに魔力を込めるようにした。

やっぱり最初は失敗ばかりだ。なので、部分を絞っていくことにした。

はじめは腕、その後関節の下、手首まで、掌、指の順で意識していくことにした。

今日1日で関節の下までできたのは大きな成果だと思った。けれど自惚れてはいけない。戦に出ることが許された以上、死ぬことのない実力を身につけなければならない。

気がつけば夕暮れになっていた。

明日の紅炎殿下との鍛錬が楽しみに思えて、よく眠れた。