【マギ】君の毒 (ページ37)

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三十七ページ37

その光に足を踏み入れ、体を照らすと地面と足が離れ、奥の見えない光の中へ入っていった。

また懐かしい景色と鳥のような生き物が飛び舞った。

＿＿＿＿＿

目が覚め気がつくと父上の腕の中にいた。

歩いてどこかへ向かっていた。

「目を覚ましたか。大丈夫か？」

反応できずに黙ってしまった。

そんな私を気にせずまた父上は話しかけた。

「近くにあるからといって、森の中に入っては駄目だ。わかったか？」

低い声で云われた。怒っているのだろうか。だとしたらなぜ怒っているのだろうか。

この言葉にも反応出来なかった。

そして父上に運ばれて駐屯地に戻ってきてしまった。

私が元いたテントに入り、寝台の上に私を乗せた。

父上は私を見て云った。

「頼む。もういなくならないでくれ…」

私の肩を大きな手でガッチリと掴み、眉を眉間に寄せていた。

「ずっとずっとおまえのことを思っていた…。おまえに辛い思いをさせた償いをさせて欲しい…」

父上の瞳には涙が溜まっていた。やがて落ちて頬を流れた。

私は大きく勘違いしていたのだろうか、父上を泣かせてしまったのだろうか…、誰かを悲しませる事は良い子のすることじゃない気がして震えた。

「ごめ……なさ…い、ごめん……なさい…」

怖い怖い怖い。

またどこかに連れて行かれはしないだろうか…、そんな恐怖が頭をよぎった。

どこかへ行けばまた迎えに来てくれるだろうか…、それでも一度捨てられることには変わりはない。それが怖かった。

「も……い…や…」

「白雪？」

「死…に…たい…」

「…ｯ！」

私が死んでしまえば誰も悲しまないはず。

誰も気にしなくていい。

誰にも知られることなく、元から何も無かったように消えてしまいたい。

父上にそう伝えられない。言葉が出てこない。

嗚咽を止めるのに必死になった。

そんな私を父上が優しく抱きしめてくれた

「そんなこと…云わないでくれ…。頼む…、頼む。償わせてくれ…。もう二度とおまえを悲しませたくない。おまえが幸せになる手伝いをさせてほしい…。」

父上の涙が大粒になった。

どうして泣くのだろう…。ハテナが頭を覆い尽くし、混乱した。

それでもまず、父上を泣かせたことはいけない事だと気づき、とっさに頷いた。

そうすると父上はまた大きな涙を頬に流して私を抱きしめた。

これでわかった。

父上が涙を流すようなことを私はしてはいけない、と。