*.**.…Episode 9….**.** ページ9
ーーーーもどかしいこの想いはやっぱり言葉では表せない。それくらい溢れてる…
「………行きましょう」
私はサーモンピンクの三つ編み男・神威と共に帰路につこうとしていた。
あれからお嬢は彼の名前を聞くと幸せに満ちた表情で笑って行ってしまった。
だが、行く寸前にG嫌が彼の見送りをするよう私に要求してきたのだ。
私は面倒ごとは嫌いなのだがこればかりは仕方なかった。お嬢の腹心であるG嫌はお嬢に付き添わねばならない。
対してこれから自宅へ帰る私なら帰るついでに送っていったほうが好都合と考えたようだ。
そして今に至る。
「「……………………………」」
私と彼との間に何とも言い難い沈黙が流れる。
気まずいのではない。
ただお互いに話す事やそれ程呑気な性格同士なのだろうか、この長い沈黙は私には何故か何処と無く落ち着く空気を持っているように感じた。
だが、突如その落ち着きのある沈黙は破られた。彼の探るような言葉によって。
神威は屋敷のただっ広い回廊を私の左を歩きながら前を向いたまま話しかけてきた。
「ねぇねぇアンタさ、もしかして人と殺り合うの好き?」
「…いきなり何」
私にとっては別に何とも思わない事だが、側(はた)からみたらきっととんでもない質問なのでしょう。それでも私は敢えてとんでもない事を訊く彼に逆に訊き返す形をとる。
「いや〜なんかさ、アンタ見てるとそう感じちゃうんだよね。特にアンタの目はそこらにいる、ましてやさっきのお嬢様とも比べ物にならないくらい狂気の目をしててさ……
綺麗だと思った…」
「…え、」
私は己の耳を疑った。彼は今なんと言ったのだろう。
私が…、綺麗…?
「アンタの目は俺の目と同じものを感じさせてる。実は見てたんだ、アンタが倒れる前。すごく高く宙を跳んで着地した所とか、お嬢様を逃して自分は逃げず敵を見据えてるあの目を…」
すると神威は言いかけて笑顔のまま私の顔を覗き込んできた。その動作で彼の前髪が揺れる。
「…少なくとも俺の目には、すごくアンタが綺麗に見えた」
そして彼はスカイブルーの目を細め、フッと優しく笑って私の顔へ手を伸ばした。
そして、私の頬に触れたのだ。
私はそれを全くもって抵抗しなかった。
何故なのかは分からない。
……でも、嫌じゃなかった。
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威信 - すごく面白かったです! (2020年1月21日 19時) (携帯から) (レス) id: effeeaf02a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:交差点プリン | 作成日時:2017年6月21日 0時