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四十五躍 現実は残酷で ページ44

今日は一段と灰色に淀んだ雲が空を覆っている。そんな日も武道場で頭上に高く竹の刀を掲げては下へ踊らせる黒髪の男は空と同じ淀んだ顔で稽古していた。

ひたすら竹刀で宙を切る音が鳴る中、背後に感じ慣れた気配がする。
土方は竹刀を振り下ろすのを止めると肩に担いで生意気な弟分に目線を巡らせた。

「お前から部活動に参加するなんて珍しい事もあるもんだな」

土方が目線を遣った出入り口の引き戸にもたれ掛かっていたのは沖田だった。彼は声を掛けられると落ち着いた表情で一歩近寄り、土方と同じく肩に担いでいた竹刀の先を彼に向ける。

「土方さん、久しぶりに相手になって下せィ」

沖田の目は肯定しか許さないというような色をしながら真っ直ぐ彼の目を射抜く。それに比例し、彼に向けた竹刀の先も真っ直ぐ彼を射抜いていた。

土方は少し驚いたが、すぐ顔を引き締めそんな彼の目色に答えるように竹刀を沖田へと向けた。それを確認すると沖田は(多分地味な奴によって)磨き上げられた木の床を蹴ると、練習不足のものとは思えない強烈な一太刀を土方にお見舞いする。

だが、それを臆する事なく間一髪のところで土方は彼の一太刀を受け止めた。

「へ、稽古のサボり魔の腕前とは思えねェな」

「…実は訊きてェ事があるんでさァ、アンタに」

****

「いやー、久しぶり。ミツバさんよォ」

一方、ミツバの元にはいつもの気だるげな面持ちで左手に見舞いのリンゴのバスケットとそこらの菓子屋で買ってきた激辛せんべいをぶら下げた銀八が訪れた。

実はミツバがこうして休学するようになってから三年連続担任である銀八がひと月に一度、こんな風に顔を出していたのだ。

「元気だったか?そういやもう二年になるな、こうしてお前の見舞い来んのは」

「…そう、ですね」

だが、しかしミツバは今迄見せた事もないような重苦しい顔をしていて、胸元で握られている手は微かに震えていた。

「…ミツバ…!?」

彼女の異変に気付いた銀八は急いで彼女に駆け寄る。
ミツバは震えを抑えるように、それとも何か言いた気に暫くギュッと手を握っていた。だが、意を決した様に生気を失った凍える小鳥の如く震え銀八の白衣の裾に縋り付いた。

「…先生、……私、このままココに居ると…生きられないかも、しれないんです…」

力無く震えながら発せられた声は心の整理が追いつかない銀八にはボンヤリと聞こえたのだが、その事実は彼の心を抉る様に銀八の胸に確実に深く傷を残したのだった。

四十六躍 弟狼の心の雨は遅れて現実にも降り出す→←四十四躍 認められないサド野郎は只のクソガキ野郎



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白玉(プロフ) - 面白すぎる..さすがプリン!!ww (2017年10月1日 8時) (レス) id: d7b0293ef7 (このIDを非表示/違反報告)
プリンちゃま(別垢)(プロフ) - みかんさん» みかんさん、ありがとうございます!『面白い』と評価して下さってマジで嬉しいです!!これからも応援ヨロシクお願いします★ (2017年4月8日 20時) (レス) id: 5afe51ca08 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - とっても面白かったです!沖田と神楽の所が特に面白いです!これからも更新頑張ってください!応援しています! (2017年4月8日 19時) (レス) id: 7cb491045b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:交差点プリン | 作成日時:2017年3月31日 18時

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