仮 (ページ2)

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高校３年に上がった春。

「ねえお願い！ほんとに誰もいないの、着いてきて！！」

友達の彼氏がサッカー部で今度の試合に出るらしく、その試合についてきて欲しいと昼休みを丸々使って懇願してきた。

「もう。わかった、今回だけだよ？」

「ほんとに！？ありがとう〜！！」

試合の日に特に予定もやる事もなかったので助けるつもりで了承した。

サッカーなんてほとんど知らないし正直興味も無かった。

のに。

試合を見て隣で彼氏を応援している友達を微笑ましく思いながらも私も1人の男の子に釘付けになっていた。

それが春原百瀬くんだった。

春原百瀬くんとは同学年だしそれなりに名前も聞いたことがあった。

明るく人当たりの良い人らしく男女問わず人気があった。

実際校内ですれ違った時に周りの子が「あんだけキラキラ笑顔ひけらかしてたらそりゃ人気も出るわなー」とかなんとか言っていてふと視線を移したこともあったから顔も知っていた。

これまでの私は、ただなんとなく勉強してなんとなく友達と遊んでなんとなく話を合わせたり空気を読んで、それなりに"楽しい"と思うようにして過ごしてきた。

試合の中の彼は、

ファールされて転んでも、

相手にボールを奪われても、

一生懸命にプレーしていた。

まるで全身でサッカーを"楽しい"と言っているようで

なんとなく楽しいと思うようにして過ごしてきた私にとってその姿は眩しくて魅力的に映った。