第三十四話 ウィスキー ページ35
暫くし、青年は一気にウィスキーを煽った。
「本当は 彼奴の為にももっと早くしてやりたかった
・・・・・
でも職業柄其れは難しくて・・・」
中身が空になり、溶け切れなかった氷だけがグラスに残る。
バーのカウンターでグラスを磨く初老の男性に青年は「もう一杯」と空のグラスを掲げて云った。
アイスピックでマスターが氷を削る。
「其奴の名は淳と云って
一応俺よりも位の高い職に就いています」
削る音を聞きながら青年は遠くを見つめるような目をして微かに笑みを浮かべた。
「婚約できただけでも・・・嬉しくて 幻のようです
よ・・・・・」
マスターの手によって角張っていた氷は丸く削られていく。
カラン、そんな心地善い音がして丸く為った氷はグラスに入り鈍く輝いた。
城戸は注がれていく琥珀色の酒を見つめながら自分のグラスに口を付ける。
喉を焼くような熱さを感じ、酒特有の匂いが口の中に広がった。
「君は何の職業に就いているのかね？」
城戸はウィスキーの味を愉しみ乍ら訊く。
青年は自分の目の前に置かれたグラスの淵をなぞり「俺は」と言葉を濁した。
「一応或る組織の何でも屋みたいな仕事を・・・」
「何でも屋？」
城戸は問う。
「喧嘩の仲裁だったり不発弾の処理だったり
所詮ドブさらいみたいな仕事です」
苦笑いして彼はそう答える。
「ほう」珍しく城戸も興味を示す。
普段の彼なら考えられない事だ、きっと酒の力を借りているので或ろう。
「君の婚約者は何の仕事に就いているのかね・・・
・・？」
ちびちびとウィスキーを呑み城戸は訊いた。
「秘書ですよ
其奴は頭が切れる事で有名ですから」
彼はグラスを置くと煙草の箱とライターを取り出す。
其の煙草の銘柄を見ると旧ボーダーを共に成立させたあの眼鏡の男を思い出す。
尤も、城戸は煙草を吸わない為あまり善く知らないが。
ジジジ、と音がして煙草の匂いが辺りに広がった。
彼との会話で気が付いていなかったが周りの客は大分減っている。
自身の腕時計を見れば店に入ってから結構な時間が経っていた。
そろそろ戻らなくては＿＿＿＿。
城戸はウィスキーを一気に呑み干すと息を付く暇も無く立ち上がる。
鞄から財布を取り出しお金をカウンターに置いた。
隣の青年はそんな城戸を見ながらふぅと煙草の煙を吐く。
「・・・今日は久々に愉しい時を過ごせた・・・
本当に有難う・・・・」
城戸の瞳は何時もより幾分か優しげだった。
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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ミリアさん» コメントありがとうございます。ワートリと文ストのクロスオーバーの話なら考えているのですが銀魂の方は大まかなストーリしか知っていないのでご期待に添えるかは分かりません。なかなか占ツクに顔を出す事が出来ませんがこれからも宜しくお願いします。 (2017年9月23日 18時) (
レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 凄く気に入った作品で大好きですもし今後他の作品を作る予定があったらワールドトリガーとコラボかトリップか転生した黒バスかアニメKか銀魂の銀時か高杉の姉か妹の作品が読んでみたいです説明が下手ならすみませんこれからも体調にきよつけてがんばてください。 (2017年9月23日 16時) (レス) id: 14f5017be6 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ひかるさん» コメントありがとうございます。なかなか占ツクに浮上する事ができませんが更新頑張りたいと思います。 (2017年6月17日 22時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる - ｳｫｫｫ！続きが気になります。(>_<)更新頑張って下さい！ (2017年6月17日 14時) (レス) id: c10de46325 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ふにゃたさん» コメントありがとうございます。更新頑張りたいと思います。 (2017年4月3日 21時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨雫 | 作成日時：2017年2月24日 23時
