8話 ページ9
その日の白夜叉は、いつもにも増して無口だった。
私はそんな彼の横で小さく欠伸をする。
私は小さい頃、昔の記憶を糸を手繰るように辿った。
「Aはね、__に生まれたんだよ」
母親は私に、私が生まれた日。
そう、誕生日を教えてくれた。
けれど、誕生日を祝ってくれる人がいなくなってから、もう結構な月日が流れてしまった。
私は、もう自分の生まれた日すら覚えていない。
覚えているのは、参るような暑さの日に、両親と誕生日の歌を歌ったことだけ。
私の誕生日は夏だった。
正確な日付は思い出せないけれど。
今日も、夜になっても暑さは一向に和らがない。
だから、私はもしかしたら今日が誕生日なのかもしれないのだ。
ふと目線を下ろすと、血のついた自身の剣身が目に入った。
今日が私の生まれた日であろうが、そうでなかろうが。
私はまた一つ歳をとることへの喜びを感じることができなかった。
小さい頃はよく、早く大人になりたいと誕生日を心待ちにしていたけれど、今は違う。
私は、いつ終わるかわからないこの戦争で、一人また歳をとってしまった。
大人に近づいたと言えば聞こえがいいかもしれないけれど、誰にも気づいてもらえない一人の誕生日が、悲しいことに変わりはなかった。
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凛 - 最高です!胸がどきどきして止まらなかったです!泣きそうになりました。 (2023年1月8日 21時) (レス) @page28 id: 2bc0f45ebb (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - kayaさん» そんな風に言ってもらえてとても嬉しいです!至らない点もあったかと思いますが、そう言ったコメントがとても励みになります。ありがとうございます! (2018年8月8日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - なんだか読み終わった後、目頭があつくて、気づいたら涙が出ていました。文章が綺麗な素敵な作品だったと思います。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年6月10日 21時