20話 ページ21
「私、斬って斬って何も残らないって気づいた時、もうこんな想いはしたくないって思った。
攘夷戦争でいくつものものを失って、生きてる心地もしなくて。
だから、剣を捨てて、戦いとは無縁の生活をして。
忘れたかった。
過去のこと、全部」
そんな私の言葉に、銀時はふーんとだけ言った。
「じゃあ俺のことも全部忘れちゃった訳?」
銀時の手が私の顔に伸びて、顎がクイっと持ち上げられる。
私が制止する間もなく、銀時の顔がぐっと近づいた。
夜も更けた江戸の町、橋の上。
私は勝手に、銀時はもうこんなことを求めてはこないと思っていた。
今の彼はとても幸せそうで、攘夷戦争の頃見た、彼の虚ろな目はもうどこにも無い。
なのに、銀時は私にこんなことをした。
そして、離さなかった。
何度も何度も角度を変え口づけをするものだから、私の息も銀時の息も上がっていった。
静かな江戸の夜、自分たちの息が妙に鮮明に聴こえて、少しの羞恥を感じた。
昔の自分たちは外と大して隔てれているわけでも無い家屋で色んなことをしたものだ。
ようやく唇が離れた時には、私は肩で息をする程に体力を消費していた。
「忘れてないよ、銀時のこと。
だって、私に忘れられないようなことをしたのはあなたでしょ?」
私がそういえば銀時は妖艶に笑った。
月明かりに照らされた彼の顔は、いつもより艶やかに見えた。
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凛 - 最高です!胸がどきどきして止まらなかったです!泣きそうになりました。 (2023年1月8日 21時) (レス) @page28 id: 2bc0f45ebb (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - kayaさん» そんな風に言ってもらえてとても嬉しいです!至らない点もあったかと思いますが、そう言ったコメントがとても励みになります。ありがとうございます! (2018年8月8日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - なんだか読み終わった後、目頭があつくて、気づいたら涙が出ていました。文章が綺麗な素敵な作品だったと思います。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年6月10日 21時