14話 ページ15
暫くして、私も攘夷戦争から身を引いた。
恥ずかしいことに、私を攘夷戦争へと繋ぎとめていたのは白夜叉だった。
もう戦う理由もとうの昔に失ったはずの私が、戦場に立っていたのは、きっと彼がいたからだ。
けれど、そんな白夜叉にも、もう会えなくなってしまった。
私たちはあまりにもお互いのことを知らない。
彼の故郷や、彼の家族だとか。
何も分からないから、どこにいるかも分からない。
なんとなく予感はしていたけれど。
「もう、一生会えないんだろうな」
白夜叉のいない夜は、随分と寂しかった。
.
そんな話も、今思い出せば随分と昔の話だ。
互いの寂しさを紛らわすために身体を重ねるなんて、若い頃の自分は随分と大胆なことをしたもんだ。
攘夷戦争を離脱して以来、私はのどかな田舎で暮らしてきた。
戦争のことなど考えなくても住むくらい、のどかな場所で暮らしたかったからだ。
そんな私を受け入れてくれた老夫婦も息を引き取り、私は江戸に出ることとなった。
働かなければ生きていけないなんて、あの頃の私は想像したこともなかったのだから。
あの頃は、人を殺さなければ生きていけなかった。
人を殺さなければ、自分が死んでいた。
子供の笑い声、虫の泣く声、みたらし団子の匂い。
数十年前まで内戦が起こっていたとは思えないくらい、江戸は活気に満ち溢れていた。
そんな江戸で私一人だけが、取り残された気分だ。
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凛 - 最高です!胸がどきどきして止まらなかったです!泣きそうになりました。 (2023年1月8日 21時) (レス) @page28 id: 2bc0f45ebb (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - kayaさん» そんな風に言ってもらえてとても嬉しいです!至らない点もあったかと思いますが、そう言ったコメントがとても励みになります。ありがとうございます! (2018年8月8日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - なんだか読み終わった後、目頭があつくて、気づいたら涙が出ていました。文章が綺麗な素敵な作品だったと思います。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年6月10日 21時