19話 ページ20
今まで、俺の中であいつは幼馴染、ただそれだけだった。
信頼はしていたし、それなりの絆のようなものが俺たちにはあったのではないだろうか。
そう思っていた。
けれど、あの時。
意図せずAと唇が触れてしまった時。
久し振りに真正面から見たそいつの顔。
赤く染まった頰。
鼻をくすぐる、シャンプーの香り。
俺は気づいてしまった。
あいつが幼馴染でありながら、一人の女であるということを。
「何だってんでィ。
あいつは。」
一人自室で呟いた嘆きは、誰にも聞こえる事なく消えて言った。
あいつは、あそこで死ねたら本望だったと言った。
自分は女だから、男に敵わないと言った。
どうやって剣を振ればいいか、わからなくなったと言った。
...俺の隣に、並べないと言った。
久しく見ていなかった、Aの涙。
悩む幼馴染に、俺は何と声を掛けていいのか分からなかった。
ずっと平行線だった、まっすぐ伸びて交わることのないこの距離感。
近くのも、離れていくのも怖かった。
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年5月11日 7時