35話 ページ36
「好きだから
人を斬る俺らにとって、生半可な気持ちでいることは命取りだ。
...けど。
俺はもう大切な人を失ったりしたくない。
俺はいつだって後悔してた。
いくら姉上に振り返っちゃ駄目だと言われても、もし俺がもう少し強かったらとか、大人だったらとか。
駄目だと言われて諦められるんだったら、苦労しない。
だから、きっとどんなにAが辞めると言えど、自分の意思で決めたことだと言えど。
そんなこと、
真選組は、自らの意思を持って辞めようとしたやつを止めたりはしねぇよ。
じゃあ、A。
真選組を辞めたいって、言えるのかよ。
もう一回、真選組を辞めたいって言ってみろよ。」
真っ直ぐ、まるで曲がることを知らない鉄の矢のように私を見つめる総悟から、目が反らせない。
「...辞めたく、ない。」
本心だった。
小さい頃からずっと共に歩いてきた近藤さんや土方さん。
真選組に入ってから何度も共に死地をくぐり抜けた一番隊の隊員たち。
かけがえのない存在である彼らと別れるのは想像以上に苦しくて。
誰だって、死にたくない。
きっと真選組から離れれば、それとは死とは無縁の穏やかな世界で暮らせるのかもしれないし、血なまこになって剣を振るうことだってないのだろう。
けれど、初めて討ち入りが終わった日。
みんなで宴と称して祝宴を挙げたあの日。
近藤さんが言った一言が、今でも忘れられないのだ。
「どうだ、A。
命を懸けて剣を振るった感想は。
そりゃあ、人を切ったんだ。
気持ちのいいもんじゃないだろう。
けどよ。
俺らはこうして江戸を今日も守ったんだ。
楽しいだろ、仲間と祝宴を囲むのは。
過激な輩がたむろしていれば、失うことになってしまった命があるかもしれない。
もし、今日俺たちが斬ったお陰で助かった命があるとすれば。」
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年5月11日 7時