8話 ページ9
ハっとすれば、紺色の女が俺の顔を覗き込んでいた。
俺はどうやら昔のことを思い出すうちに、目の前の女の事が見えなくなってしまっていたらしい。
「貴方のお名前は、なんていうんですか?」
青い空の下、Aに似た女はそう言った。
「坂田銀時。」
さかた、ぎんとき、とたどたどしく繰り返す女は、やはりAに瓜二つで。
Aはもうこの世にいないことも、この女がAと別人であることも分かっている。
はずなのに、どこか俺は期待してしまっている。
この女が、俺の名前を聞いてなにか思い出すことを。
この女が、Aであることを。
10年も昔に死んだ少女の事を今だに考え続ける俺を、情けないと高杉なら笑いそうだ。
「お名前、教えてくださってありがとうございます。
じゃあ改めて__
__初めまして、坂田銀時さん。」
にこりと笑う少女の眩しい笑顔に、俺の中の何かが音を立てて壊れた気がした。
__初めまして。
その言葉が、脳裏にこびりついて離れない。
「そうだな。
初めまして。
__Aさん。」
昔死んだAと、今目の前にいるAは別人だ。
そう自分に言い聞かせるように、俺は初めましてと告げた。
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凛 - とても良かったです! (2022年12月20日 19時) (レス) @page36 id: 0db889cc25 (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - 岩長漆@三色団子と朧大事さん» ありがとうございます!そういったコメントが一番の励みになります!今後も皆さんにお話を届けられるよう頑張ります! (2018年6月11日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
岩長漆@三色団子と朧大事(プロフ) - 突然失礼いたします、岩長と申します!けんそう様の作品読ませて頂き、とても感動しました!次作の方も頑張ってください!応援しております! (2018年6月10日 22時) (レス) id: c1dc633bc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年2月10日 20時