月と嘘 (ページ17)

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十四話ページ17

「それでそいつ、あのくっせー牛の血を全身に浴びて……真っ赤なトマトになっちまったんだよ！」

そう言って笑う【ロキ・ファミリア】の人。

「……」

私の顔は物凄く険しくなっていると思う。

「それにだぜ？そのトマト野郎、一緒にいた連れ置いて、叫びながらどっか行っちまってっ……お姫様、助けた相手に逃げられてやんのぉ！」

それまで語り手だけだった笑いもファミリア内に広まった。

あぁ、ダメだ。

やめてくれ。

これ以上、ベルを貶めないでくれ。

やめてくれ。

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わない」

ベルが椅子を飛ばして、立ち上がる。
「ベルっ！」
そして外へ飛び出した。

「っ……」

ベルを追いかけようとしたが、無理だった。
私はココから出られない。

その代わりシルさんが追いかけてくれた。
店内は突然の事にざわざわとしている。

一歩私が下がるとアイズさんがきて外を見回していた。
が、神ロキが連れ戻しにきた。

それでこっちの存在に気付いたのだろう。

「貴方は……」

「どうも…こんばんは、アイズさん」

「どうも…」

こうして彼女とちゃんと言葉を交わすのは初めてだなと思いながら挨拶する。

「んー？珍しいなぁ、虹彩移植(オッドアイ)。やっぱ綺麗やわ」

「ありがとうございます」

一度ペコっとお辞儀して「それでは……」と言い席に戻る。
多少の視線はあったが、私はシルさんが帰ってくるまで店に残らせてもらうことにした。

結局、ベルは見失ってしまったらしく、しょんぼりとして帰ってきたシルさんに必死に頭を下げお礼を言った。
その後、ちゃんとお金を払いお店を出た。

お詫びとして持っていたお金全部渡そうと思ったけど、代金以外受け取ってもらえなかった。
なんでも私が居るから食い逃げにはならないらしい。

ベルはダンジョンに居るのだろうか……？
私は一人、すっかり暗くなった街を歩いた。

このままファミリアに帰ることもせず、朝まで一人でさ迷っていた。