第十話 少し小噺 ページ10
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「…………ポートマフィアに、入ります」
……『悪』は嫌だの何だのと考えたくせに、あっさりと身を翻してしまった自分が憎い。
餓死して野垂れ死ぬよりマシだ、と奥から沸き上がる気持ちを無理矢理押さえ付ける。
「ついて来い」
私がうつむいて手の中の銃弾を見つめていると、芥川さんが端的にそう云った。
「……どこへ、ですか」
「首領の元だ。貴様の処遇を決める」
……森さんですか。
「入るのは認めてもらえると思うが、粗相はするな」
「そんな勇気無いです……」
取り敢えず弾丸を服のポケットにでも入れようとして、其処で初めて今の自分の服装に目が行った。
灰色のパーカーに、膝より少し長めのワインレッドのプリーツスカート。
くるぶし位のスニーカーに黒いニーハイソックス。
おまけにパーカーのフードには犬でも猫でも無い善く判らない形のミミ―――敢えて云うなら、逆三角形の様な形の―――が付いていて。
……私の嗜好とはかけ離れている其の服装に、思わず顔をしかめた。
……というか身の回りでいろいろ起こりすぎていて、今まで全く気が付かなかった。
「……どうした?」
私の表情を見て、芥川さんが訝しげに云う。
そして、何か続けようとして口を開き、ふと思い当たったように口を閉ざした。
「……どうしました?」
何か、首領の処へ行くのに問題があるのだろうか。
不安を感じながら尋ねると、芥川さんは
「……そう云えば、まだ貴様の名前を知らぬ」
と小さく呟いた。
「…………住野Aです」
……私は完璧に相手のペースに振り回されていた。
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梓(プロフ) - 二つ結びの人さん» ありがとうございます…!励みになります! (2018年3月31日 10時) (レス) id: 72c3b0ba9c (このIDを非表示/違反報告)
二つ結びの人(プロフ) - こんばんは!!とっっても面白いです!!!この先が凄く気になります!これからも頑張ってください!!! (2018年3月28日 0時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)
梓(プロフ) - 碧灯さん» 返信遅れてすみません…!そうです!住野よるさんの「よるのばけもの」をモデルにしています (2018年3月23日 22時) (レス) id: 72c3b0ba9c (このIDを非表示/違反報告)
碧灯(プロフ) - 初コメ失礼します! 質問なのですが、主人公の名前と異能力って 住野よる さんをモデルにしていらっしゃいますか? (2018年3月16日 19時) (レス) id: 391be2aaba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梓 | 作成日時:2017年8月13日 12時