chapter1─強欲な女 ページ2
嗚呼、本当に疲れたわ。夢を何でも叶えると言うから来たのに、想像よりもずっと酷い。
雑草は生え散らかしてるし、周りなんて森なんだか樹海なんだかよくわからない。闇の中に放り出された感覚にまでなりそう。
不安な心を落ち着けようと、地図の役割を任せていたスマートフォンの画面に、時間を表示する。
「……まだ午前の11時じゃない……なんでこんなに暗いのよ!もう嫌になるわ!!」
歩けど歩けど森ばっかり!当たり前なんだけど……
何か嫌なものが出てきそう、だなんて恐怖を押し殺しつつ、イラつきながら先に進む。
突然、バサバサと背後で大きな物音が聞こえる。
「ひぇっ!?」
驚きで振り返れば、大量のカラスが私を見ていた。かと思えば、カァー!カァー!とひっきりなしに鳴き出した。
「もう……嫌ぁああああ!!!」
先程からの恐怖も相まって、方向もわからずにただただ走ったわ。怖すぎるのよ、この森。
息が続かなくて、肩で息をしながら立ち止まる。落ち着いた頃に顔を上げれば、そこには不気味な洋館が私を待ち構えていた。
気が抜けて、更には腰まで抜けてしまう。
スマートフォンの画面を下にスライドして、表示された招待状の写真と照らし合わせる。ここで間違いないようね。
「……この館の主人って……センス無いわね……」
「それは申し訳が無い。お気に召しませんでしたか」
突然、背後から女の声がした。驚いて振り返る。
確認した視線の間近に、端正な顔をした女。爽やかというか、胡散臭いというか……そんな笑顔を向けられる。
驚かされた仕返しに、鼻で笑って見せてやったわ。
「ええ。こんな不気味な洋館、何か出そうとしか思えないわね」
「それは失敬。今度からは何か出しておきましょう」
「出さなくていいわよ!……全く……」
こちらが感情を振り回されて百面相している間、女は始終 涼しい顔。腹が立つわね……
やっと足腰に力が入るようになったので、ゆっくりと立ち上がる。
女は、流れる様な動作で私の服の汚れを叩き落とす。
「あら、気が利くのね」
「お客様には最大限に満足して頂く為に、当然の振る舞いをしている迄です」
女は汚れた白い手袋を外すと、私に対して手を差し伸べた。
「さぁ、お手をどうぞ。ご案内致します」
あまりに美しい動作で魅入ってしまったけれど、首を軽く振ってその手を取る。
女はゆっくりと歩みを進めるが、それでも私の歩調を優先させ乱さない。
……生まれてくる性別間違えてるわよ、この女。
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柚葉。結衣(プロフ) - とても凄いです!描写がとても不思議な感じが出ていて好きでした。続きの更新、楽しみに待っていますね! (2020年1月22日 18時) (レス) id: 6cc0ccfec3 (このIDを非表示/違反報告)
仮面ネコ - スゴイです!続き、楽しみにしてます。 (2020年1月17日 19時) (レス) id: aa9ff900b7 (このIDを非表示/違反報告)
なんで悟空出てくんだよwいいじゃんかw(プロフ) - 現実らしくないけど、でもどこか生々しいリアルっぽさが現時点で溢れ出ていてすごく好きです…更新楽しみにしていますね。 (2020年1月17日 16時) (レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
かろん - めっちゃ面白いです!! (2020年1月16日 15時) (レス) id: 948f9ca07f (このIDを非表示/違反報告)
かろん - 料理の名前よく分かんないけど、何かのスープってことですね(( 依頼人さんと主ちゃん、涙さんの関係は依頼を果たしたら終わりか仲間になるのか、どっちも違うのか楽しみです!更新頑張ってください! (2020年1月16日 15時) (レス) id: 948f9ca07f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:道化 | 作成日時:2020年1月14日 19時