『文豪ストレイドッグス』飲んで呑まれて愛を引く<短編集>

日本酒『ポートマフィアallキャラ』※櫻子さんリクエスト ページ5

温泉、それは日本の浪漫。娯楽、癒し。私はそんな温泉に、仕事で来ており、楽しむだけ楽しんでいた。

「ぐ、ぐぇ……A……さ……」
「黙って樋口ちゃぁん。極楽しよう？」

後輩の首を羽交い締めにしながら。却説、どうしてそうなったのか。時は一寸遡る。

「温泉、ですか？」
「そう。A君も休みが欲しいだろう？しかも、旅行好きと聞いてね。だから、私から気の利いた贈り物だよ」

首領から直々に温泉の宿泊券を貰い、私は目の前の首領を見詰める。彼はにこやかに微笑んでいた。
確かに、私は日本各所の温泉巡りが趣味だったりする。この温泉も、実は私が首領に教えた場所だったり。

という訳で私は今、異能の瞬間移動を使い、例の温泉に居るという訳。辿り着きチェックインも済ませ、部屋に荷物を置いた後。娯楽場から騒ぎが聞こえた。

「スマーッシュ！！」

梶井の声と、勢いの良い卓球の球。思わず拍手すると、全員の目が此方を向いた。しばらくの沈黙の後、中也さんが溜め息と共に呟く。

「て、手前……来るンなら声掛けろよォ……」
「え、な、何故ですか？」
「あんなに長く歩かなくて……済みましたね……」

樋口ちゃんが、私を見て脱力。私は訳がわからなかった。首を傾げたその瞬間、龍ちゃんが私を抱き上げる。

「おい芥川……何してやがる……？」
「A、今すぐ僕を拠点に送り届けろ」
「逃げようとすンじゃねェよ！」

風呂嫌いの龍ちゃんと、中也さんの叫び声で納得がいった。大方、皆は龍ちゃんの見張りのために来てるんだろう。私は純粋な旅行で来てるので、少々羨ましくなる。

取り敢えず龍ちゃんの腕を解き、両の手を繋いで目を見つめる。

「龍ちゃん。私は温泉好きなの。休みで来てるの。此処はオススメだから、是非入って欲しいな」
「……嫌だ」

間を置き、断られる。気の許された弟分からそんな事を言われるもんだから、多少は傷付く。だが、風呂嫌いは知っているので、目を見つめてお願いをしてみる。

「龍ちゃん」
「僕は拒否する」
「龍ちゃん、ね？」
「嫌だ」

余りに拒否され続け、私の心がガタついてきた。中也さんが龍ちゃんを見据える。コメカミに、少しばかりの血管が見えた。

「芥川ァ？手前、その手を離せよ」
「僕には任務が……」
「龍ちゃん、体だけ温泉の男湯に転送してあげよっか？」

ブチ切れた私の声を聞き、素早く離れる龍ちゃん。そのまま中也さんに捕まり、男性陣は温泉の方向に向かって行った。

「さ、私たちも行こっか」

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