『文豪ストレイドッグス』飲んで呑まれて愛を引く<短編集>

※ ページ27

雨音は激しくなるばかりだ。カフェオレ味のアルコールを身体に流し、大体どの位経っただろう。私は酔っても性格が変わらないので、彼女でさえも疑ってかかる事を思い出す。

「はぁ……こんな男より、早く彼女に会いたいです」
「うっせェ！文句垂れンなら帰れ！」

中原幹部は酔っ払い、カウンターに伏せて凭れる。余りにも行儀が悪い。マナーがなっていない。こんな奴の介抱なんてゴメンだ。

「わかりました。帰ります」
「嘘だろ？冗談だって……おい、本当に帰ンな！」

荷物を持って席を立った瞬間に、裾を掴まれた止められる。鬱陶しい事この上ない。溜息一つで振り返る。中原幹部は少し涙目だ。

「酔ってるんですね、帰ってください。男の介抱なんざごめんです」
「其処までさせねェよ……後少し付き合え」
「嫌です」
「手前っ……！」

即答。中原幹部のコメカミに血管が浮き出る。プライベートまで侵食されてたまるか。だが、上司を潰して帰った方が効率は良さそうだ。仕方なく、席に戻る。

「わかりましたよ。何ですか？」
「そんなに怒るなよ……手前ら、何処までいってんだ？実際よ」

中原幹部は数少ない私達の理解者だ。一葉さんとの関係は彼しか知らない。こんなに心配するのは、上司としての見守り何だろう。
しょうが無く、答えられる範囲では答えてやる。

「いけるとこまで、ですかね」
「マジか」
「私、釣った魚には此れでもかと餌をやる種の人間なので」

平然と答えてやる。嗚呼、昨日の一葉さんは可愛かったなぁ……思い出して顔が綻ぶ。中原幹部の微かな笑いが聞こえる。
カラン、と軽いベルの音が鳴った。

「A先輩……あの……此れは……？」

愛しい人の声で視線を向ける。本人が傘を落とし、目を見開いて固まっていた。……少し拙い。彼女には中原幹部にバレている事を伝えていない。

踵を返して走り去る彼女。

「すみません！席外します！」
「あ、おいっ！」

止める声も聞かずに一葉さんを追いかける。懐に小刀を出現させ、脚力と体力を引き上げる。雨に打たれている事なんて、気にしていられなかった。

「一葉さん！待って！」

差は直ぐに縮まり、一葉さんの手首を掴んだ。急に止まった事で、勢いが殺される。彼女の眩しい金糸が揺れる。お互いに肩を上下に揺らし、息を荒くしていた。

彼女が振り返る。私の頬に平手を叩き込む。泣いていた。雨に紛れても、涙はわかった。

「結局そうだ！私より異性の方が良いんでしょう！？」

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