【マギ】願い事 Ⅱ (ページ17)

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52話ページ17

「ハァッハァッ…」

もうダメ…走れない

ギギギギギィ…

「…扉？」

どう見ても壁なのに、隠し扉だろうか？

ここまでは一本道だった

…進むべきか、戻るべきか。

ヒタヒタ…

こちらに近づいてくる足音

もう…どうにでもなれ！！

力を込めて
その扉を思い切り押した

.

.

.

.

『待っていました、我が王よ』

凛とした声が
真っ暗闇の中に響き渡る

…誰？

『私は徳操のジン、モラリアス。

…あなたに仕える精霊です』

「ジン？」

『ええ。』

ガタン

「やめろ！！今すぐ器に戻れ！！」

怪しく光る大剣を片手に叫んだのは

息を切らした…アリス。

暗闇にいるはずなのに
ぼうっと光って見えた

「モラリアス！お願い力を貸して！」

『勿論ですとも我が王よ。
私をどうぞお使い下さいませ』

心の中に響く声

「やめろ＿＿＿＿」

「汝と汝の眷属に命ず、我が魔力を糧として、我が意志に大いなる力を与えよ…モラリアス！！」

手のひらを天に翳すと
手中に輝く金の錫杖が現れる

「何故…貴女にジンが操れるのですか。それは、私の＿＿＿＿」

震える剣先を私に向け
もう片方の手で髪を掻き乱しながら

恐れるように言葉を紡ぐ

『いいえ。私たち(・・・)はA様のジンです。

さぁ、こちらへ戻ってきなさいメルカルト』

どういう事…？

『私は戻らない！モラリアスの言うことなど聞いていられるか！』

『…聞くも聞かないも、元に戻らなければお互い消滅してしまいます』

『私は戻りません』

「誰が手放すものか…」

アリスの纏う光が強くなる

『いけませんね。A様…』

…ええ、わかっているわ

両手で錫杖を握りしめて
意識をアリスに集中させた

「うわぁぁぁぁぁぁ」

…今だ。

「＿＿＿＿モラール・リライズ！」

「うぐぁっ…」

アリスの手から剣が落ち

ふらりと影が倒れ込んだ

…やった。

コレで＿＿＿＿

「はぁっ…はぁっ…」

何よこれ…

いきなり身体が重く＿＿＿＿

『A様マゴイが…』

錫杖が光の粒になって
闇の中に消え失せる

四肢に力が入らずに
冷たい床に倒れ込んで目を閉じた

コツコツコツ…

近づいてくる誰かの足音。

「良くやってくれた。少し休むといい」

最後に見えたのは
見覚えのある紫だった。