お兄ちゃんのお友達【HQ!!】 (ページ1)

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「友達連れてきてもいい？」

目の前で頬袋に白米を詰め込んだ兄が言った。

兄が友達を家に連れて来ることはほとんどないので、へえと声を上げる。

箸でミニトマトを掴んだが、つるりとした表面のせいで落ちた。曲者め。

「珍しいね」

「明日から帰りが早いからゲームしたいんだってさ」

強豪のバレー部に所属する兄。

いつも遅くまで部活をやって帰ってくるが、明日から面談の期間に入るので早帰りになる。

どうやら兄のお友達はうちにあるゲームを持っていないらしく、やらせて欲しいと強請ってきたとのこと。

ミニトマトを皿の上で弄びながら頷く。

「いいじゃん。どうせお母さんもいないだろうし。
ゆっくりしてってもらって……お菓子でも買っとこうかな」

「テレビつーかリビング占領しちゃうけどいいの？」

「部屋閉じこもっとくから気にしないで」

さて、お客さんが来るとなれば明日朝イチで掃除機でもかけるか。

そんで学校帰りにお菓子とジュース買って……

「お友達さんは、なんのお菓子が好き？」

「どんだけ尽くすんだよ」

「滅多に来ないお客さんなんだから」

「チューペット」

「それお兄ちゃんが好きなんじゃん」

テーブルの下の長い脚を軽く蹴る。

おほ、とよく分からない声を出した兄はにっこり笑った。
私は知っている。兄の笑顔は六割がおねだりモードだということを。

「可愛い可愛いAちゃんはお兄ちゃんが好きなの買ってきてくれるんだよね？」

「……言い回しが気持ち悪い」

「ね？」

「わかった、わかった」

赤い果実は奥歯に潰されて、酸っぱい味が広がった。