【ヒマワリの微笑み】2 ページ5
撮影は至って順調なものだった。何度か撮り直しの要求も入ったが、それらは想定していた出来事の範囲内で収まり、アスモデウスは上機嫌で現場を後にする。
「今日は用事があるから、タクシーを拾って帰る」と、マネージャーに断りを入れると嫌そうな顔をされたが、息抜きに寄り道をしていくだけだと説明し、入間を探しに出る。
もう、帰った後かもしれない──そう不安が頭を過ぎるが、まだ大丈夫かもしれないという気持ちがあった。
彼の名を口にすることが許されるのなら──、きっと今すぐにでも叫び、彼を手元に呼び寄せただろう。そう出来ないのは、入間とアスモデウスが「友」であった時代はとうに終わっているからで、どうして彼は死んでしまったのだと気持ちが塞ぎそうになる。
「いかん……。あまりストレスを溜めると悪周期に入る」
人間界で生活することを選んだあの日、恩師であるバラム・シチロウが言った。魔界と違って人間界に住まう空想生物には悪周期というものはないが、悪周期に入り犯罪を犯すと魔界同様罰せられる、と。
人間として振る舞うなら、悪周期に入らないよう適度にストレスを発散するといいと教わったが、入間に触れられないこの時間こそが悪周期への歩みを早めていると言える。
「だが、今日でそれも終わる……」
そう呟くとすぐ近くで「お疲れ様でした」と聞き慣れた声がする。ずっと待ち焦がれた姿が、温もりが手の届く場所にいる。
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ラッキー使い魔(魔獣、精霊等出ます)
ケルピー
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作者名:しょくらぁと | 作成日時:2019年12月4日 19時