【ヒマワリの微笑み】３ ページ6
「入間様！」
気が付けば、叫んでいた。驚いたようにアスモデウスを見上げる入間を見て、彼は膝を付く。
「入間様。お疲れ様でした、宜しければ一緒に帰りませんか。良いカフェバーを知っているんです」
「は、え……？ あの、アスモデウス……さん？」
一体何をしているんだと言いたげな顔が、懐かしい。従属することを誓った入学式の日も、入間はこんな風に狼狽えていた。当時は気付かなかったが、きっとこれは彼にとって最も恥ずかしいと思える行為なのだろう。
「入間様、どうか私の事は──」
そっと立ち上がり、小さな手を握る。
悪魔よりもずっと温かくて、壊れてしまいそうな小さな手。傷だらけで、がさついた手は幼い頃からの苦労を物語っているようで、直ぐに見つけられなかったことを悔やんだ。
『アズ』と、お呼びください。
たったそれだけの言葉が、アスモデウスには言えなかった。もう、対等な立場ではなくなった。否、彼が魔王となったその時から──。
「アスモデウスさん？」
「ああ……、私の事は『アリス』とでもお呼びください」
言いにくかったら変えてもいいですよ、と付け足せば入間はぎこちなく「アリスさん」と口にする。
「はい」
「えっと、お邪魔じゃなければ……」
不安そうな顔は、相手が今やテレビや雑誌で名を見ない日は無いとまで言われる俳優だからか。もしかしたら前世同様、目立ちたくない質なのかもしれない。
「大丈夫ですよ。変装はしますから、目立ちません」
ね、とアスモデウスは入間の手を取った。
ラッキー使い魔（魔獣、精霊等出ます）
ケルピー
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作者名：しょくらぁと | 作成日時：2019年12月4日 19時
