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アズイル(入間転生)【ヒマワリの微笑み】 ページ4

耳に入った黄色い悲鳴に、アスモデウス・アリスはため息を吐く。何十、何百と昔──魔王の座に就いた彼を失ってから、アスモデウスの胸には大きな穴がぽかりと空いた。それを埋めるように様々な女を抱いたり、気紛れに人間の欲を満たしてきたが、そこに空いた穴は埋まるどころか、たった一つの何かを求めて今も大きく、深くなっているような気がする。
 何をしても満たされない虚しさがまた、呆れと共に口から漏れるとそれに気付いたマネージャーを勤める人間の女性がアスモデウスの二の腕を小突く。
 
 
「ため息を吐かない。ファンの前ですよ」
 
 
 小声で注意され、三度目のため息が出そうになる。
 どうして興味もない人間に愛想を振り撒かねばならないのか。笑みを作り、興味もない人間共に愛想を振り撒くと一人の少年に目がいった。
 
 
──入間様。
 
 
 人間界の海のように深い青。
 小柄で華奢な体躯、くりくりと大きな瞳を忘れた事は一度だってなかった。自然と口元が弛み、左手が上がった。気づいて欲しい、その意味も込めて手を振るといっそう湧き上がる声。

「わっ……!すごい人気なんだなぁ」
 
 
 関心するように呟かれた声は、声変わりする前の少年のようなボーイソプラノ。
 
 
「あの少年は?」
 
 
「……少年?どれです」
 
 
 女性の発した「どれ」という発言さえ気にならないほど、アスモデウスは舞い上がっていた。彼だ、とその場を離れようとする少年──入間を指さすと彼女はああ、と頷き言った。
 
 
「鈴木入間ですね。彼──代役で来そうですよ。演技に関しては全くのド素人見たいですが……いくつかの作品にエキストラとして出ているそうです」
 
 
 そろそろ楽屋に行きますよ、の声を聞き流しながらアスモデウスは遠くなっていく入間の姿をいつまでも追いかける。
 
 
──これはきっと、運命だ。
 
 
 次は、きっと手に入れる。掴んで、依存させて、奪われないように……。

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作者名:しょくらぁと | 作成日時:2019年12月4日 19時

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