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「突然悪いね。ひとりで、寂しかったんだ」
彼女はショートケーキとコーヒーを少しずつくちに運んでいる。
「いえ…大丈夫です。わたしも、一人だったので」
緊張してるのだろうか、俯きがちに言う彼女は、睫毛が長く、肌が白い。儚い、という印象がぴったりだった。
「素敵なお嬢さん、僕はハウル。貴女のお名前は?」
「え…と、Aです」
「へえ、Aちゃんか、素敵な名前だね」
そういうとAちゃんはへへ、とすこしだけ笑った。
「ありがとうございます。祖母が付けてくれたんです」
思わず、目を奪われた。
はにかんで笑う彼女は、美しかった。
「……ハウルさん?」
心配そうに聞いてくる彼女。
もう、我慢できない。
これだけ素敵な女性なら、引く手あまたかもしれない。
他の人にとられるくらいなら、今。
それに僕の誘いを断る女性なんて、いない。
意を決して上げた顔は、柄にもなく緊張していたと思う。
「Aちゃん――――」
フォークをもつ彼女の小さな手を握る。
「僕たち、付き合わない?」
沈黙。
数秒固まっていた彼女に、手を振り払われた。
「さいってい。初対面で告白だなんて、随分遊んでらっしゃるのね。」
いつの間にか食べ終わっていたショートケーキの皿の上にフォークを置き、残っていたコーヒーを勢いよく飲み干すと、彼女はそのまま勘定をして店を出ていってしまった。
「…………え、」
振られた?この僕が?
今日は最高だったのに、なんで?
意味が分からない、あの女、もしかしたら盲目だったりするんじゃないのか。
くそ…くそ……、。
柄にもなく泣きたくなる気持ちを抑え、城に戻る。
「ハウルさん、おかえりなさ…、!」
「あーあ。女にでも振られたか」
玄関先に倒れこみ、泣いた。
それから、暴れて、むしゃくしゃして、城を壊しそうになった。
マルクルとカルシファーが必死で抑えて、宥めて、慰めてくれて、た、気がする。
それからはよく覚えてない。
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__ne_mU_(プロフ) - 待ってました!!! (2018年11月24日 10時) (レス) id: 4f8346dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
みみ - 楽しみにしてます! (2018年10月3日 21時) (レス) id: 717f876b10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せわけ | 作成日時:2018年8月23日 22時