忘却審神者保護任務 (ページ3)

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とぷん、と何かを突き抜けるような感覚と、目の前の大きな日本家屋。後ろで鈴の音と共に鳥居が消える。
「あ！主君、お帰りなさい！！」
桜色の髪の、小さな子。大きな兜を被って短い棒を腰に刺した、空色の瞳の男の子。私は彼を知っている。
「ここ…は…」
「主の本丸だよ」
加州が優しく微笑んでいた。
「私の…本丸…？」

［秋◾︎藤四◾︎です。外に出◾︎◾︎てわくわく◾︎ます］
［◾︎◾︎が好きな◾︎の、たく◾︎ん教え◾︎くださいね］

知っている。庭に大きな桜の木があって、お花見をした。

［僕と◾︎仙くんでたくさ◾︎作ったか◾︎ね！］

体の小さな子たちが鬼ごっこしているのをいつも見ていた。

［◾︎るじ◾︎◾︎ー！おにごっこにかった◾︎な◾︎てくださいね！］

縁側でお茶してるところに出会うと、巻き込まれてお菓子をもらった。

［じじいの茶会に付き合っ◾︎はく◾︎んか？茶菓子もあるぞ］

無茶をすれば怒ってくれて、無茶をしたら怒った。

［折れても代わりはいるが◾︎将は怒るからなぁ］

私に初めて応えてくれた、世界一可愛い初期刀。

［あー。川の下の子です。加州清光。扱いづらいけど、性能はいい感じってね］
［俺が主のことを愛する。だから、主も俺を愛してね］

一番に鍛刀でやってきた、好奇心旺盛な初鍛刀。

［秋田藤四郎です。外に出られてわくわくします］
［主君が好きなもの、たくさん教えてくださいね］

ある日突然鍛刀できた、可愛い唯一の女士。

［紅華清光といいます。癖はあるけど、使える刀のはずですよ］

みんな、私の家族だ。
「うん…ただいま」

そうだ。私には家族がいた。私の声に応えてくれた、刀の神様。1人じゃない。形だけじゃない、私の居場所。生きる意味も、生きていく場所も、ここにある。

［忘却審神者：審神者名宵桜(よざくら)
　現世に一時送還後、本丸にて記憶を復元。
　後遺症、歴史の歪みなどは観測されない］