8話 ページ9
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「みんなランク戦ランク戦ランク戦…忙しいな」
そう言いながらとぼとぼと廊下を歩く。
犬飼と別れた後も知り合いの隊員に練習に付き合ってくれないか交渉するも、全て「ランク戦のことで忙しいから」と断られてしまって行く宛てがないのである。
誰にも構って貰えず、だからと言って1人でトレーニングをすると言っても、今日のノルマは達成してしまったのでやる気も起きない。
更にいえば、新しい隊服を見せびらかしてた時の対応が酷かったのできぶんもダダ下がりだ。
「暗殺者」
「マフィア」
「葬式に居そう」
「ついに厨二病になったんだね」
「あれ、背縮んだ?」
「すまんきな粉ぶちまけちった」
…後半に至っては悪意しか感じない。ついでに言うとスカートには未だにきな粉がついている。許せない。
「…トリガーオフすればええやないかい」
トリガーオフ。
そう言えば一瞬光に包まれて、今朝のトレーナーに緩いパンツの姿になり、ふわふわとした肩甲骨辺りまでの金髪が垂れる。
昨日夜更かししたせいか急にだるくなった体。休みたいなと思ったところでお腹が鳴った。
「おっいいタイミング〜
ぼんち揚げくう?」
足音もなく背後から現れた彼。肩を小さく揺らしたあと彼の方を向けばずいっとお菓子の袋が差し出された。
不審に思うも、どうやら彼は食べ物を与えてくれるそうなので「食べます!」と嬉々として返事をする。
まるいせんべいみたいなもののようだ。だけれど少し甘い匂いがする。
美味しそう。
そうして口に運びながら彼のかんばせを確認してみれば、この前話しかけて来た人だとやっとわかった。
「…えっと、S級の、…」
「うんうん」
「…」
「…」
「ごめんね覚えてないね迅さんだよ」
「ああ迅さん」
いただきます
行儀よく言った彼女はバリバリとぼんち揚げにかぶりつく。
「おいひいです」
「でしょー。もう一個いる?」
「いる」
光の速さで袋からぼんち揚げを取り出して口にする彼女。
迅は「変な人に連れていかれそうだ」と心配になるもそんな心配は無さそうだと考え直し、顔を綻ばせる彼女にひとつ提案を持ちかけた。
「君今暇でしょー?玉狛で練習しない?迅さん今日ヒマだから相手してあげるよ」
「たまこま?…どこですかそれ」
「玉狛支部だよ。俺も所属してるとこ」
「…ぼんち揚げ残り全部くれるなら」
「もちろんいいよ〜」
「行きます」
やっぱり心配になる迅だった。
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ほのか(プロフ) - 続きが楽しみですー! (2022年5月22日 15時) (レス) @page16 id: 3995d0bd0b (このIDを非表示/違反報告)
何も言わずに旋空弧月 - めっちゃおもろいです一気読みしました。何年でも待ちます。二宮隊贔屓だから隊服スーツで嬉しいっす! (2021年5月27日 16時) (レス) id: 43784786f9 (このIDを非表示/違反報告)
あきかぜ(プロフ) - コクーンさん» 全てイメージだと私は思っています。とにかくセンスがいるポジションですよねぇ(^_^;) (2021年2月13日 14時) (レス) id: 24b04063a4 (このIDを非表示/違反報告)
コクーン(プロフ) - 射手の射程、弾速、威力ってどうやって決めてるんでしょうね?www (2021年2月13日 13時) (レス) id: dd8a571986 (このIDを非表示/違反報告)
あきかぜ(プロフ) - コクーンさん» コメントありがとうございます(^^♪ そうですね、こんな軌道とかどう?とか話し合ったりしそうです笑那須さんの入隊はまだなので出てくるのはまだ先になると思いますが絶対絡ませますのでそれまでお待ちくださいね〜! (2021年2月7日 22時) (レス) id: 24b04063a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきかぜ | 作成日時:2021年2月7日 14時