70 ページ23
「……君は」
ぽつ、と静かに声を零す。
「我々にとって重要な戦力だ」
私は俯いたまま、じっと耳を傾ける。
「取引の内容はこうだった。
君が調査兵団に入る、その代わりこちらは君について詮索は一切しない、した場合は君が任意で抜ける。
今優位に立っているのはどちらか、考えるまでもないと思うが」
今度こそ顔を上げた。
この男は、
右腕を失ってなお、力強い瞳で挑むようにして見てくる目の前の男は、
言い訳の余地もない私に、あろうことか選択権を委ねているのだ。
私の言い様によっては、ここに残ることだって可能になる。
気持ちが浮き立つと同時に、激しい怒りが渦巻いた。
余裕ぶりやがって。
私はあの日から、ずっと、ずっとお前を……っ。
「……この5年はっ……あんたを憎み続けた、この5年は……一体、何だったんだ……。全部、無意味だったのかよ……」
言っても仕方が無い。
だけど、どうしても自分の中で消化不良することができなかった。
5年。
周囲の人間が次々と喰われて、静かになって、かと思ったらまた仲間が増えて、消えて、その繰り返しの日々。
私だって、リヴァイ以外どうでもいい訳じゃない。
関わった人も、そうでない人も、死んでいくのを目の当たりにするのは耐え難く、いやでも精神を蝕んでいった。
でも平然と兵士をやっていけたのは、リヴァイの傍に居れるというモチベーションの他に、もう1つある。
エルヴィンのせいにできたから。
あいつの指揮が悪かった。あいつの作戦が悪かった。あいつのせいで、仲間が死んだ。
憎む対象がいるのは、少しだけ楽だった。
頭の中でバカみたいに罵倒していれば、他に余計なことを考えなくて済む。自分の痛みを和らげるには、もってこいの材料。
それが根本から崩されてしまったら。
”悪者”というレッテルが剥がされてしまったら。
抉られた傷を取り繕うようにして巻いてあった、言い訳という名の包帯が、どんどんどんどん解かれていって、
膿が晒されて、
自分の力じゃもう、立てなくなってしまう。
壊れて、しまう。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーカラー
あずきいろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
より(プロフ) - 美竜（ミリュウ）さん» コメントありがとうございます！更新ひどく遅いのに、今も変わらず見ていただけて感謝に尽きます…！2つ目のコメはリクエストでしょうか？事故〇〇というと、事故ハグや事故チューなどのラッキーアクシデントの類を指していますか？ (2019年8月16日 11時) (
レス) id: ac4384d703 (このIDを非表示/違反報告)
美竜（ミリュウ） - 続きですみませんがいつか事故〇〇←〇〇は何かをお願いしていいですか？ (2019年8月16日 10時) (レス) id: b33ef74fc2 (このIDを非表示/違反報告)
美竜（ミリュウ） - 夢主が、夢主が倒れたァア(´；ω；`) (2019年8月16日 10時) (レス) id: b33ef74fc2 (このIDを非表示/違反報告)
より(プロフ) - 伝説のパンダさん» ありがとうございます！！幼馴染みは私も憧れます笑。たくさんのお褒めの言葉、嬉しすぎて涙腺崩壊！頑張っちゃいます！！ (2019年2月7日 7時) (レス) id: abaeb80319 (このIDを非表示/違反報告)
伝説のパンダ - とても面白かったです！幼馴染み。。。いいなー。。リヴァイが夢主ちゃんを大切にしている感じが最高です！ずっっっっーと！応援してます！番外編（？）の、喧嘩、いいですね！兵長可愛いです！これからも、頑張って下さい！ (2019年2月4日 23時) (レス) id: e7cf133723 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：より | 作成日時：2018年9月22日 23時
