第三十七話 ページ39
樋口「貴方が戦闘要員でないことは調査済みです。健気な妹君の後を追っていただきましょうか」
冷徹な声に追い立てられ、後頭部に銃口を突き付けられても、彼が揺らぐことは無かった。
谷崎「あ？」
これまで見てきた温厚な彼からは想像も出来ない、低く、相手を威圧する事を目的とした凄んだ声。その一言とも言えないような短い音で、場の温度が一度二度下がったように錯覚する。
谷崎「チンピラ如きがーーナオミを傷つけたね？」
口調だけは穏やかなまま、周りの空気を一変させて……谷崎さんは幽鬼のように立ち上がり、自身の異能力の名を吐き出した。
『細雪』
淡く緑色に発光する雪が、陰鬱な路地裏に降り積もる。その儚く美しい、異常な光景に樋口さんが思わずといった様子で動きを止めた。
樋口(雪……？この季節に？)
谷崎「敦くん、Aちゃん、奥に避難するンだ。
こいつはーーボクが
殺す」
奥歯を噛み締めて、彼は言う。しかし避難する間もなく樋口さんが発砲した。相手の隙を奪う為だろう。しかし、数多の銃弾は谷崎さんの胴体や顔をすり抜けていった。幻影は断面から緑色の霧を吹き出し掻き消えていく。
谷崎「ボクの『細雪』はーー雪の降る空間そのものをスクリーンに変える」
樋口「なっ……何処だ！」
慌てて虚空に銃口を向け威嚇するも、谷崎さんは樋口さんを意に介さず続ける。
谷崎「ボクの姿の上に背後の風景を『上書き』した。もうお前にボクは見えない」
樋口「しかし……姿は見えずとも弾は中る筈っ！」
両手を広げ射撃音を響かせる樋口さんを嘲笑うかのようにーーその首元に「手」が現れた。
谷崎「大外れ」
樋口「ーーッ！？」
細い首に巻き付く谷崎さんの手に力がこもるのが傍目から見ても判った。
谷崎「死んで終えーー！」
樋口「くッ……ぁ」
息を呑んで、止める為に足を動かす。だが、その動作は途中で停止された。
ーー何故、止める？
得体の知れない自分を受け入れてくれた優しい人達を殺そうとしたマフィアを助ける必要が何処にある？
第一、谷崎さんを止めなくても物語通りに事が進むのであれば、彼女が死ぬ事は無い。今の所は順調だ。だが、でも、彼を、彼女を。
(理屈なんか、関係ないだろ……っ！！)
駄目だと、全ての理由をすっ飛ばして叫ぼうとした。
谷崎さんの叫びの余韻、樋口さんの苦しげな呻き声。それなりに音がかき消されそうな中で、ーーその音は、「咳」はーーよく、響いた。
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三日月ピエロ(プロフ) - (名前)さん» マジですか！！ありがとうございます！これからもどうか土下座女をよろしくお願いしますね！！ (2019年4月28日 22時) (
レス) id: 506de80960 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 三日月ピエロさん» はい！先ほど全部読みました！！ (2019年4月28日 20時) (レス) id: 192730a35f (このIDを非表示/違反報告)
三日月ピエロ(プロフ) - (名前)さん» ちゃんと細かい所まで読んでくださってありがとうございます！続編も出来れば楽しんで下さいね^^ (2019年4月28日 20時) (レス) id: 506de80960 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 三日月ピエロさん» あそうなんですね。 (2019年4月28日 18時) (レス) id: 192730a35f (このIDを非表示/違反報告)
三日月ピエロ(プロフ) - (名前)さん» 分かりずらくてすみません！！実はそういうネタがあってですね……その後に主が所望している「そうなりよ」と続けるまでがワンセットのようなネタがあるんです！ (2019年4月28日 8時) (レス) id: 506de80960 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三日月ピエロ | 作成日時：2018年5月13日 13時
